サンフレッチェのゴールマウスを守り続ける林卓人が、GK史上8人目となるJ1通算300試合出場を達成した。昨季はケガの影響で出場数が激減したが、今季はシーズン中盤からスタメン起用が増加。38歳を迎えても、紫の守護神は向上心を失うことなく常にベストを追い求めている。

強力なライバルを押しのけ、再びスタメンの座を奪い返した林卓人選手。

― 2002年の初出場から19年が経過しました。J1通算300試合出場の達成、おめでとうございます。

 「ありがとうございます。ただ、300試合出場ということに関して、特別な感情はないですね。若くしてそういう記録を達成している選手もいますし、どう言えば良いか分からないですけど、僕よりもっと試合に出ている選手もいますから。それに、どちらかと言うと時間がかかった方だと思いますしね。もちろん僕みたいな選手でもコツコツ積み上げてここまで来れたというのは、高校を卒業した当時の自分からすれば驚きと言えば驚きです。でも、いま思うのは『次の試合に出たい』という気持ちは毎試合、変わらないので達成感みたいな気持ちはないですね」

― 通過点というと語弊があるかもしれませんが、特別意識する数字ではなかったわけですね。

 「300試合がゴールであれば達成感もあったかもしれないです。これ以上、試合に出ることができません、ということであれば意味が出てくるかもしれないですけど、そうではないですからね。次のゲームに出たいという思いには上限がないので、そういう思いがある限り、自分の体が動く限りは目の前の試合に出るというチャレンジを続けるだけです」

― 体が動く限りという言葉が出ましたが、昨季は開幕前に腰を痛め戦線離脱を余儀なくされました。

 「昨年は年間通じて苦しんだ部分が多かったです。今年がベストかと言えばそれは分からないですけど、プロでやっていくための平均値というのは、しっかり上げていかないといけないと思っています。その意味では、今年はある程度は安定したコンディションを保てているのかなと思います。常にベストを目指すというよりも、どれだけ年間通じて平均値を高く保てるかというのが大事だと思うので、そこは意識して取り組んでいきたいですね。その意味ではプロとしてやっていくためのコンディションづくり、そのチャレンジができているという点では、昨年から比べたら数段良い状態なのかなと思います。もちろん平均値と言いながら常にベストを目指すんですけど、その平均値が上がっていけば自然とお客さんに見てもらえるものとか試合に勝てるものが自然に出していけると思うので、そのトライは常にしていきたいと思っています」

― 現在は、その平均値を高く保てていますか?

 「今は良い状態を保てていると思いますけど、年間を通じて安定させられなくなってきているのは事実です。優勝した2015年は自分でも良かったと思いますが、そこからはケガもあり山あり谷ありを繰り返している感じですよね。毎年、年間通じてパフォーマンスを安定させられるのが良い選手の条件だと思うので、その意味でも平均値の安定にはこだわっていきたいと思います」