清宮幸太郎(日本ハム)や村上宗隆(ヤクルト)など、高校生野手に注目が集まった2017年のプロ野球ドラフト会議。地元広島出身で、甲子園の1大会の本塁打記録となる6本塁打をマークした広陵高の中村奨成もドラフトの目玉となっていた。

ドラフト指名直後の取材に笑顔で応じる中村奨成選手。

 甲子園のスター獲得に向けて、カープはドラフト前から1位指名を公言。中村奨は小さな頃からカープファンだったこともあり、相思相愛でドラフト当日を迎えた。しかし蓋を開けてみればカープのほか、中日も1位で指名し、2球団での抽選となった。

 クジ引きに臨んだのは当時の緒方孝市監督。ファンが固唾を飲んで見守るなか、中村奨の願いが通じたのか、緒方監督が交渉権確定のクジを引き当て満面の笑顔を見せた。一方、広陵高で中村奨は口を真一文字に結んだまま、中継を通し当たりくじを掲げる緒方監督を見つめていた。

「指名していただいて、緒方監督がクジを引いてくれた瞬間、本当は表情に出したかったですし、笑顔でいたかったです。ですが、自分の中でこれで満足したくないという思いと、今からがスタートだという思いがありました」

 意中の球団が交渉権を獲得しながらも、はやる心を抑えていた当時の中村奨。ドラフト会議翌日にはカープから指名挨拶を受け、緒方監督直筆のメッセージが書かれた当たりクジを手にすると、ようやく中村奨も報道陣に向けて白い歯を見せて笑った。

 大きな期待を背負って入団した中村だったが、プロ入り2年間はケガにも泣き一軍出場は叶わなかった。しかし3年目の今シーズン、二軍で結果を残し、初めて一軍に昇格。安打を放つことはできなかったが、プロ初打席も経験し、着実にプロの階段を登っている。

 広島生まれ広島育ちの甲子園のスター・中村奨とカープ。相思相愛の想いが結実した2017年のドラフト会議だった。