小園海斗や林晃汰、将来のカープを背負って立つであろう高校生の逸材を数多く獲得した2018年のプロ野球ドラフト会議。この年カープは、育成ドラフトで、大学生外野手を1人指名した。全国的には無名の存在だった大盛穂だ。

育成契約ながら1年目から二軍で頭角を現していた大盛穂選手。

 ドラフト1位で楽天に入団した辰己涼介(立命大)やソフトバンクに入団した甲斐野央(東洋大)といった同級生とは違い、大学時代に輝かしい実績を残していたわけではない。それだけに、育成とはいえ、プロ球団からの指名には驚きを隠せなかった。

 「よく、頭が真っ白になるとか言いますが、自分の場合は『なんで?』という気持ちでした。自信がなかったわけではありませんが、プロにいける実力はないだろうと自分で決めつけていたので正直不安な気持ちはありました」

 昨年10月に行った本誌インタビューで、指名直後の思い出を語ってくれた大盛。名前が呼ばれた瞬間は、うれしさと共に不安も混じっていたが、母親からの電話で、プロに挑戦する気持ちを固めたという。

 「指名されてから母親からすぐに電話がかかってきたんですが、泣きじゃくっていて何を言っているか分からなかったんです。でも、その電話で『あぁ、こんなに応援してくれていたんだな』と改めて気づいて、プロの世界でも頑張ろうと思いました」

 秘めている潜在能力はピカイチ。カープ入団後に新人選手が行う体力測定で、新人8選手の中でトップの数字を叩き出し、プロ1年目だった昨年は、二軍でチーム最多の109試合に出場した。そしてわずか1年で、目標にしていた支配下登録を勝ち取った。

 背番号が3桁から2桁の「59」に変わって迎えた今シーズン、課題だった打撃が向上。二軍で3割超の打率を残したことが認められ、7月に一軍デビューすると、73試合に出場し、35安打2本塁打16打点、走っては5盗塁を記録。スタメンも数多く経験するなど、激戦区の外野ポジションで存在感を発揮した。

 カープの育成出身選手の安打は中谷翼以来10年ぶりの快挙。二軍で汗を流す若鯉にとって希望の光となっている大盛の活躍、それはカープの育成力の高さ、そして、伸びる選手を見抜くスカウティング力の高さを証明したとも言える。