11月11日に2020年シーズンの全日程を終えたカープ。6月の開幕から苦戦が続いた今季は、52勝56敗12分の5位に終わった。ここでは厳しい戦いが続いた今季を、カープOBの大野豊氏が総括する。

最終的に抑えに固定されたフランスア投手だが、春先から7月まではなかなか状態が上がらなかった。

◆実績組の投手が高い壁となるべき

 今季のカープの全日程が終了して、早くも1週間以上が経過しました。いろいろあったペナントレースですが、今回から数回にわたり今年のカープの戦いぶりを総括していきたいと思います。

 120試合制で行われた今季、カープはなかなか状態が上がらず、5位でシーズンを終えました。終盤になって良い内容の試合も増えてきましたが、トータルで見れば厳しいシーズンだったと言わざるを得ません。

 その要因となったのは、やはり投手陣の不振でしょうね。開幕前から「クローザー、セットアッパーをどうするか」という部分が課題となっていたのですが、そこが解消されないままにシーズンに突入してしまいました。非常に不安定な状態で開幕を迎えたことで、その後も勝ち切れない試合が多く見られました。

 スコット、菊池保と試行錯誤を重ねる中で、最終的にはフランスアがクローザーに、その前を塹江、ケムナが務めることになりました。若い投手が台頭してくることは良いことなのですが、塹江、ケムナに関しては経験、実績というものが何もなかったわけですよね。そういう投手に大事な場面を任せないといかなかったというところに、今季のカープ投手陣の苦しさがよく現れていたと思います。

 まだ彼らに本当の意味での安定感、信頼感がないという中で、リーグ3連覇の立役者となった中﨑、今村、一岡といったあたりが全く機能しませんでした。来季を見据える上で若い投手を使って戦力を整えていくことも重要ですけど、実績を残している投手たちの復活も同じくらい重要になってくると思います。

 今季存在感を見せた塹江、ケムナですが、自らの力でポジションを奪い取った、とは言いづらい部分があります。任せられる投手がいないからチャンスを与えられた、という側面がなかったとは言い切れません。ですから彼らのさらなる成長を促す意味でも、実績組の投手が高い壁となって投手陣全体のレベルアップを図ってほしいですね。