カープ一筋23年の佐々岡真司氏を新監督に迎え挑んだ球団創立70周年の記念シーズン。結果は52勝56敗12分けで5位。2年連続のBクラスで2020年の戦いを終えた。

 ここでは、数々のドラマが繰り広げられた2020年ペナントレースの戦いを振り返っていく。

 今回は、9月19日のヤクルト戦(神宮)。今年支配下登録を勝ち取った大盛穂のタイムリー内野安打で勝利した試合をお送りする。

9月19日のヤクルト戦。同点の延長10回、2死二、三塁で、大盛穂選手がタイムリー内野安打を放ち、勝ち越しに成功した。

◆劇的同点弾からの執念のヘッドスライディング。気迫の勝利で森下の好投に応えた

 5試合連続で「1番・センター」でスタメン出場した大盛穂が、1点を争う緊迫した試合で、チームに勝ち越し点をもたらし、初のお立ち台も経験した。

 接戦を演出したのは、先発したルーキー森下暢仁。大学時代に慣れ親しんだ神宮球場で7回4安打2失点の好投。2回に坂口智隆に2ランを打たれた以外はほぼ完璧な内容だった。唯一、三塁に走者を背負った4回は、自慢の速球を内角に投げ込み、エスコバーを見逃し三振に。ピンチでも内角を攻める強い気持ちをみせ、チームを盛り立てた。

 森下の好投に報いたい打線は、1点ビハインドで迎えた8回、堂林翔太が魅せた。1死後に打席に入ると、セットアッパー清水昇の速球を打ち返し打球は赤く染まったレフトスタンドへ。劇的な13号ソロで試合を振り出しに戻した。

 そして、試合を決めたのは大盛。最後の攻撃となった10回、堂林と田中広輔の連打などで2死二、三塁のチャンスをつくると、追い込まれながらも打球を叩きつけると、セカンドへの内野安打を記録。ヘッドスライディングで安打をもぎとり、見事決勝点を奪い取った。前打席の7回1死一、三塁の勝ち越し機で空振り三振に倒れていただけに、その借りを返す執念のプレーだった。

 今季急成長を遂げた若鯉として注目された大盛。プロ1年目育成選手としてプレーした昨季は、二軍でチームトップの109試合に出場し、オフには支配下登録を勝ち取った。背番号が124から59に変わった2年目は、7月24日に初の一軍昇格。その後も一軍に帯同し73試合に出場。2本塁打を含む35本のヒットを放ち、自慢の守備・走塁以外にバットでも存在感を示した。

「打席を重ねるなかで、一球で仕留めることができる打席が多くなってきているという実感はあります」

 9月は月間打率.338をマーク。激戦区の外野手争いで、数多くの出場チャンスを勝ちとり、一軍に欠かせない戦力へと成長を遂げた。

「当たり前のことをしっかり当たり前にすることを心がけています。首脳陣の方から『こいつはやることをしっかりとやるな』という印象を持ってもらえるようなプレーをどんどん見せることができたら良いなと思っています」

  入団時の新入団体力測定では、総合でトップの数字を叩き出すなど、秘めたポテンシャルは抜群。育成の星としてブレイクした新星が、来季もグラウンドで躍動する姿を期待したい。

●試合結果
9月19日
カープ3ー2ヤクルト
勝:フランスア 2勝2敗9S
負:石山 3勝2敗10S
本塁打:(広)堂林13号(ヤ)坂口9号