カープ一筋23年の佐々岡真司氏を新監督に迎え挑んだ球団創立70周年の記念シーズン。結果は52勝56敗12分けで5位。2年連続のBクラスで2020年の戦いを終えた。

 ここでは、数々のドラマが繰り広げられた2020年ペナントレースの戦いを振り返っていく。今回は、11月1日の中日戦(ナゴヤドーム)。1年目からフル回転のルーキー・森下暢仁が10勝目を挙げた試合をお送りする。

11月1日の中日戦。森下暢仁選手が8回無失点の好投で10勝目。カープでは2014年の大瀬良大地選手以来となる、プロ1年目での二桁勝利を達成した。

◆新人王を引き寄せる貫禄の勝利。大瀬良以来となる二桁勝利を達成

 2020年、数々の名シーンを届けてくれたドラ1右腕・森下暢仁の今季最終登板となった試合。憧れでもあった、明治大学の先輩・柳裕也との投手戦を制し10勝目を挙げた。

 プロ初勝利を挙げたナゴヤドームで、今シーズンの活躍を象徴するかのような最高のピッチングだった。森下の投球を加速させる分岐点になったのは初回の守り。1死から京田陽太に安打を打たれると、続く阿部寿樹にはセンターの頭上を超す二塁打。一気にピンチが広がったかと思った矢先、カープ守備陣が落ち着いた連携プレーで、2塁をオーバーランした阿部をタッチアウト。2死から後続をしっかりと抑え、立ち上がりを無失点で切り抜けた。

 2回以降は、力強い直球と鋭く変化するカットボールを効果的に使い分け、中日打線を翻弄。6回には2死から連打を許し、この試合2度目の得点圏に走者を置いての投球となったが、高橋周平をショートゴロに打ち取り、ピンチを脱出。大森穂と坂倉将吾のタイムリーで奪った3点のリードを8回まで1人で守り抜いた。

 9回は守護神フランスアに託したが、8回119球を投げて7つの三振を奪い無失点。この試合で規定投球回も達成し、巨人戸郷翔征との新人王争いを大きくリードする一勝となった。

「いつも『攻めていく』という気持ちが一番大事だと思っているので、逃げずに自分の球をしっかりと投げるということを意識しています」

 即戦力ルーキーとして入団し結果を求められたシーズン。開幕から先発ローテに定着すると、攻める気持ちを胸に投げ続け、チーム3位の18試合に先発登板。1完封2完投を含む10勝3敗、リーグ2位の防御率1.91。セ・リーグの新人で防御率1点台は、2012年のカープ野村祐輔以来、そしてカープでは2014年の大瀬良大地以来となる、プロ1年目での2桁勝利を達成した。

 また、シーズン終盤の10月・11月は5試合に先発。完投勝利を含む4勝(0敗)を挙げ、37イニングを投げて防御率は0.24。自責点はわずかに1と驚異的な成績を残し、カープの新人では、1998年4月の小林幹英(現二軍投手コーチ)以来22年ぶりに、月間MVP(10月・11月度)を獲得した。

「振り返ると、色々なことが印象に残っています。開幕3戦目でのプロ初登板、ナゴヤドームでのプロ初勝利。大学の先輩の柳さん(中日)との投げ合いも含めて、いろんな選手と対戦することもできました。シーズン1年間の全ての経験が印象に残っています」

 1年目からチームに欠かせない存在になった背番号18。来季も先発陣の柱として投げ抜いていく。

●試合結果
11月1日
カープ3ー0中日
勝:森下 10勝3敗
負:柳 5勝7敗
S:フランスア 2勝3敗18S