カープ一筋23年の佐々岡真司氏を新監督に迎え挑んだ球団創立70周年の記念シーズン。結果は52勝56敗12分けで5位。2年連続のBクラスで2020年の戦いを終えた。

 ここでは、数々のドラマが繰り広げられた2020年ペナントレースの戦いを振り返っていく。

 今回は、11月5日の巨人戦(マツダスタジアム)。松山竜平のサヨナラ安打で勝利し、今季初の7連勝を飾った試合をお送りする。

11月5日の巨人戦。延長10回、2死満塁から松山竜平選手がサヨナラタイムリーを放ち7連勝。持ち味の勝負強い打撃で勝利に貢献した。

◆8回の併殺打を取り返す、意地のサヨナラタイムリー

 プロ13年目のベテラン松山竜平のサヨナラ打で、リーグ王者の巨人に勝利。後半戦になり上昇気流を描いたチームは今季2度目のサヨナラ勝ち、そして今季初の7連勝を飾った。

 8回表を終わって2点のビハインド。しかし、8回裏、3者連続四死球で作った満塁のチャンスで、會澤翼が2点タイムリーを放ち追いつくと、延長10回に劇的ドラマが待っていた。

 長野久義の安打をきっかけに1死一、二塁にすると、西川龍馬がライト前ヒット。この当たりで代走の曽根海成が本塁へ滑り込み、審判の判定はセーフ。しかし、すぐさま巨人原辰徳監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、判定がアウトに覆った。

 万事休すかと思ったが、“最後まで諦めない”カープベンチの強い気持ちが再び試合を動かした。

 同点打を放っている會澤は申告敬遠。2死満塁の場面で松山に打席が回ってきた。2ストライク2ボールと追い込まれるも、巨人の6番手・田口麗斗が投じた6球目をセンター前に弾き返すと三塁ランナーが生還。サヨナラ勝ち、そして7連勝を決める劇的打に。また、7番手で登板したケムナ誠にうれしいプロ初勝利をプレゼントする一打にもなった。

 チームでも指折りの高い技術を持つ打撃職人・松山。しかし、チームの調子とは反比例し、10月は不調が続いた。4番に座っていたが、チャンスで打てない試合が続き、3割あった打率も急降下。そして、10月の得点圏打率は.212と、持ち味の勝負強さも影を潜めていた。

 この試合でも8回、會澤のタイムリーで同点に追いつき、なおも1死一、二塁の勝ち越しチャンスで打席に立つも痛恨の併殺打。それだけに、自身の無念を晴らす“執念”の安打となった。

 チームでは長野久義に次ぐ年齢。一体感をテーマに掲げるチームにとって、松山が担う役割は大きい。

「やっぱり若い子たちがすごく自分のことを見てきますし、そういう立場なんだと思います。そこで、しょうもないことをしていたらいけないと思いますし、僕は言葉で引っ張っていくタイプじゃないので、自分のプレーや練習を見て少しでも何かを感じてもらえればと思っています」

 この日の試合前、同級生で苦楽を共にしてきた小窪哲也のカープ退団が発表された。それだけに奮い立つものもあったはずだ。

「とにかく中軸を任されたら得点圏で打つこと、それが第一ですね」

 後半戦は数字を落とすも今季の得点圏打率は.324。チーム2位の67打点を叩き出した勝負強さはチーム屈指だ。来季はV奪回につながる一打を量産していく。

  

●試合結果
11月5日
カープ5ー4巨人
勝:ケムナ 1勝1敗
負:田口 5勝6敗1S
本塁打:(広)長野10号(巨)坂本18号