今季のドラフトでは育成選手を含め、全7選手を指名したカープ。今季10勝をマークするなど大活躍を見せた森下暢仁の一本釣りに成功した昨年に続き、今ドラフトも社会人ナンバーワン投手・栗林良吏(トヨタ自動車)の単独1位指名に成功。投手5人が指名された中で、唯一の高校生が4位指名の小林樹斗投手(智弁和歌山高)だ。
ここでは、長年アマチュア球界の好投手たちの球を、実際にブルペンで受けた上で選手を取材し続ける“流しのブルペンキャッチャー”こと安倍昌彦氏が、ドラフト4位指名・小林の特徴について語る。
◆夏の独自大会で評価急上昇
今ドラフトで私自身驚いたのが、この智弁和歌山高の小林樹斗投手を4位で指名できたことです、おそらく担当スカウトである鞘師スカウトも相当に喜ばれたのではないかと思います。
高校生投手の中でも評価の高かった小林投手ですが、1年前の小林投手は今ほどの騒がれ方をしていませんでした。1年前の秋は上半身の力みがあったことで、制球が定まらず、球自体もシュート回転していたのですが、夏の独自大会では劇的に変化していたのです。大きく投球が変わった要因として本人の中では下半身を意識して投球するという感覚をつかんだということですが、そのおかげで上半身の力みがなくなったことがポイントでしょう。
投球フォームの中で“脱力”と“出力”のメリハリがついたことで直球の質が非常に高まったように思います。具体的に言うと、10の力感で10の威力の球を投げてもプロの打者なら容易に打ってしまいます。7の力感で10の威力の球を投げるからこそ打者の打ちにくい球となるのです。そういう意味では小林は“投球のコツ”を段々とつかんできていると思います。
高卒入団となりますが、私の見立てでは一軍デビューまでそこまで時間を要さないと見ています。1年間はしっかり体を鍛えて、2年目にウエスタン・リーグで実戦経験を積んだ後、オールスター明けに一軍デビューというスピード感も十分考えられます。そのために大切なのは、とにかく今つかんでいる感覚を決して忘れないようにするということです。夏に見せていた投球をコンスタントに発揮できるようになれば、順調に成長していく投手だと見ています。