佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。

 今回は、3年目の右腕・ケムナ誠がプロ勝利を飾った11月5日の巨人戦(マツダスタジアム)を振り返る。

11月5日の巨人戦に登板し、無失点リリーフを見せたケムナ誠投手。その裏、チームがサヨナラ勝ちし、背番号29にプロ初勝利が舞い込んだ。

◆「お前の良さはガムシャラに行くこと」コーチの言葉を胸に全力投球で応えた一年

 佐々岡監督から大きな期待をかけられていたが、春季キャンプでつまづき開幕二軍スタートとなったケムナ誠。7月5日に待望の今季一軍初昇格を果たすと、ようやく巡ってきたチャンスに全力投球で応え続けた。

 初登板から5試合連続無失点。ビハインドや複数イニング登板も着実にこなし、首脳陣の信頼を勝ちとっていった。7月と8月の2カ月で13試合だった登板数も、9月は12試合、10月は14試合とシーズンを追うごとに増えていった。

「今シーズンは、ストレートを軸に変化球でカウントを整えることができるようになっていると思います。変化球の割合を増やすことができて、相手に的を絞らせないことが少しはできていると思います」

 変化球のバリエーションを増やすことで、一番の武器となる力強い速球の魅力が向上。与えられた登板で結果を残し続けたことで、9月以降は、勝利の方程式を任される存在にまで成長した。

「良い部分としては、打者にどんどん向かっていく姿勢が出せていることだと思います。一軍に上がってから試合で受けていただいた會澤(翼)さんにも、打者に向かっていく姿勢は良いと言っていただけました。また、二軍で菊地原(毅)コーチと永川(勝浩)コーチに『お前の良さはガムシャラに行くことだから』と言われていたので、とにかく一球一球を全力で、先を考えないで、とにかく今を全力でという気持ちで投げていました」

 打者に負けない強気のピッチングで、リリーフとしての居場所を確立したケムナは、11月5日の巨人戦で節目となる40試合登板、そして待望のプロ初勝利を達成した。

 出番は4対4の延長10回に訪れた。先頭の重信慎之介に安打を許すも、代打若林晃弘をショートゴロ併殺打。続く炭谷銀仁朗もショートゴロに抑え、無失点で切り抜けた。するとその裏、松山竜平がサヨナラタイムリーを記録。プロ3年目でうれしいプロ初勝利が舞い込んだ。

「試合の流れを引き戻せるように、全力で投げて抑えて、味方打線にリズムよくつなげられるようにということを意識しています」

 リリーフとして心がけている流れを変えるピッチング。それを見事に実践した登板となった。成長著しい若きリリーバーは、貴重な経験を糧にして、来季も全力投球で応えていく。