プロ1年目から18試合に先発し、1完封を含む2完投で10勝3敗、防御率1.91。文句のつけようがない成績を残した森下暢仁。12月17日にはカープ選手としては10人目、2014年の大瀬良大地以来となる『新人王』に輝いた。

 ここでは本人のコメントと共に、輝きを放ったゴールデンルーキーのプロ1年目を振り返っていく。

森下暢仁選手の記念すべきプロ初登板は6月21日のDeNA戦。勝ち星はつかなかったが、7回4安打無失点と上々のデビューを飾った。

◆開幕前に不安を露呈するも、確かな実力を示したデビュー戦

 大学ナンバーワンの即戦力投手と呼ばれ、明治大からドラフト1位でカープに入団したルーキー・森下暢仁。150キロを超えるストレートを軸に、落差の大きいカーブなど変化球を織り交ぜた投球スタイルで、主将を務めた大学4年時にはチームを38年ぶりに日本一に導くなど、文句のない実績を引っさげてプロの扉を開けた。

 森下が背負うことになった背番号は、佐々岡真司新監督が現役時代につけていた『18』。前田健太(現ツインズ)以来、5年ぶりに復活したエースナンバーに周囲の期待は高まった。森下はエースナンバーを与えられたことを粋に感じながら、森下のプロ生活はスタートした。

「周りに先輩がたくさんいる中で18番をもらっているので、自分としては自身を誇りを持ってやりたいと思っています。やはり結果を出さないとこの番号をつけている意味がないので、しっかりと意識していきたいと改めて思っています」

 連日注目が集まった初の春季キャンプを乗り切り、3月の開幕に向けて順調に調整を続けた。しかし、コロナ禍の影響でプロ初となるシーズンは延期に。約3カ月に及ぶ延期期間は一軍に帯同し続け、先の見えない中で練習を続けた。

「延期期間にできることは練習しかなかったので、とにかくしっかりと開幕に向けてできることをやるのみでした。(1年目で)調整方法も分からない部分があったので、コーチやトレーニングの方々の指導のもと練習をするだけでしたね」

 誰もが経験したことがない長い調整期間。プロ1年目のルーキーにとって、先の見えない中での調整は難しい面があったのかもしれない。それが結果として現れたのが開幕前の練習試合だった。6月7日のオリックス戦で5回途中6失点、6月14日のソフトバンク戦では4回9失点と打ち込まれ、大きな不安を残し開幕を迎えることになった。

「練習試合2試合では打たれてしまいましたが、しっかりとした球を投げられている手応えはありました。なので、練習試合の結果をシーズンに入って出さないようにしたいと思っていました」

 開幕前の実戦では結果を残せなかったが、佐々岡監督の信頼は揺るがず、無事に開幕ローテーション入りを果たした。デビュー戦として任されたのは開幕カードの3戦目。6月21日のDeNA戦だった。

 不安と緊張が入り混じったプロ初登板の立ち上がり。2回に迎えた満塁のピンチを無失点で切り抜けると、力強い直球に、効果的に変化球を織り交ぜDeNA打線を翻弄。7回104球を投げて無失点。4被安打2四球8奪三振。3回以降はわずか1安打の素晴らしいピッチングで記念すべきデビュー戦を終えた。

「プロ初登板は無観客試合ではありましたが、練習試合と違ってやっぱり最初は緊張した部分がありました。ですが、『勝たないといけない』という強い気持ちで臨むことができたので、ある程度良い投球ができたと思います」

 リリーフ陣が打たれプロ初登板・初勝利とはならなかったが、上々のデビューを飾った森下。ルーキーとは思えない安定感をみせ、開幕前の不安を一掃する、確かな“実力”を示した。(②に続く)