2020年ドラフトでカープは育成選手を含め、全7選手を指名した。その内、野手は2人のみとなったが、即戦力として期待されるのが、ドラフト6位指名の矢野雅哉(亜細亜大)だ。

 ここでは、長年アマチュア球界の好投手たちの球を、実際にブルペンで受けた上で選手を取材し続ける“流しのブルペンキャッチャー”こと安倍昌彦氏が、ドラフト6位指名・矢野の特徴について語る。

カープからドラフト6位指名を受けた矢野雅哉選手。

◆プロでもトップクラスの肩力

 カープがドラフト6位で指名した矢野雅哉選手は、すでに多くのメディアで報道されている通り、とにかく肩が強い選手です。どの球団に入っても間違いなくトップクラスの力強い送球ができる選手です。

 矢野選手の担当である松本スカウトによると、大学時代にはホームベースから遠投してバックスクリーンに当てる並外れた芸当を目の当たりにしたそうです。そして肩の力が強い選手は、往々にして送球が力任せになってしまいがちですが、矢野選手の場合は生田勉監督の指導の下で、しっかりと基本に忠実なフォームで送球ができているのもポイントです。苦しい体勢で捕球したとしても、しっかり送球が安定している点は、起用する側としても見ていて安心できるのではないでしょうか。

 もちろん送球だけでなく、守備時の打球の捌き方も非凡なものを見せています。足首、膝などの関節を柔らかく使った“地を這うような”低い位置での捕球ができる選手です。順調に成長していけば十分ゴールデン・グラブ賞も狙えるだけの素質は持っていると思います。開幕一軍を狙うとしたら、まずは守備固めの枠を目指していくことになるでしょう。

 一方で打撃はまだ物足りない部分があります。潔すぎるというか、どうにも淡白な印象が拭えません。将来的にクリーンアップを担うというタイプではないだけに、追い込まれてからも投手が嫌がるような、際どい球をカットしてファールにする技術などを覚えるのも大事だと思います。守備力は申し分ないだけに、打力をどこまで伸ばせるかがレギュラーを獲得する上で重要になってくるはずです。