チーム唯一の二桁勝利となる10勝。リーグ2位の防御率(1.91)。圧巻の成績を残した森下暢仁が、球団では2014年の大瀬良大地以来となる新人王に輝いた。森下を除き、これまでカープで同タイトルを獲得したのは9選手。ここでは1980年代〜1990年代にかけて活躍した、カープ歴代の新人王を振り返る。

ルーキーイヤーに12勝をマーク。現在はコーチとしてチームを支える澤﨑俊和三軍投手育成強化コーチ。

◆1986年、長冨浩志 「快速球を武器に奪三振を量産」
<1986年成績/30試合10勝2敗2セーブ/完投6/121.1回/防御率3.04>

 社会人野球を経て1985年ドラフトで1位指名され入団した長冨が、初年度から下馬評通りの投球を披露した。

 150キロを超える速球を武器に、他チームの並み居る打者を翻弄。投手陣の層の厚さもあり8月まではリリーフ起用が続いたが、8月12日の大洋戦で初先発を託されると見事勝利投手に輝いた。以降も奪三振が魅力の速球派として、先発ローテーションの一角に食い込み2年ぶり5度目のリーグ優勝に貢献した。

 夏場以降だけで6完投、1完封を含む8勝をマークし、文句なしの新人王に輝いた。球団では小早川毅彦、川端順に続く、3年連続での所属選手の新人王獲得となった。ルーキーイヤー以降も北別府学、大野豊、川口和久、金石昭人らと投手王国を形成。三振を奪える速球派右腕として、チームに貢献した。

◆1995年、山内泰幸 「独特の“UFO投法”で打者を幻惑」
<1995年成績/34試合14勝10敗/完投5/163.1回/防御率3.03>

 1994年に球団初の逆指名選手としてカープに入団した山内泰幸。プロ初登板初先発となった4月11日の阪神戦で初勝利を挙げ上々のスタートを切ったが、その後は打ち込まれ5月中旬から中継ぎへの配置転換となった。

 しかしこの変更が功を奏し、5月だけで4勝を記録し月間MVPを受賞。6月中旬から再び先発として起用されると、その期待に応えてプロ初の完封勝利を挙げた。その後も順調に勝ち星を伸ばし、オールスターゲームにも出場した。

 9月中旬から5試合連続で敗戦投手になるなど終盤はやや失速したが、最終的には、14勝10敗とルーキーながらチーム2位の勝ち星を記録した。右肘を高く上げる独特の『UFO投法』も話題となり、カープ選手としては9年ぶりの新人王となった。

◆1997年、澤崎俊和 「スライダーを武器に1年目からフル回転」
<1997年成績/38試合12勝8敗/完投2/156.1回/防御率3.74>

 青山学院大時代、東都大学リーグ通算18勝の成績を引っ提げて、カープを逆指名する形で1996年ドラフト1位でカープに入団した澤崎。

 “東都リーグのエース”と呼ばれた澤﨑は、高い制球力とスライダーを武器に開幕当初は中継ぎとして存在感を発揮した。リリーフとして結果を残していた澤﨑だが、開幕ローテーションを担っていた投手たちが不調や故障に陥り、同期入団の黒田博樹(ドラフト2位)と共に先発ローテーションを任されるようになった。

 オールスターにも出場する活躍を見せ、その後もチームの主力選手としてフル回転の活躍を見せていった。結果、ルーキーイヤーながら黒田の6勝を大幅に上回る12勝をマーク。球団史上6人目となる新人王に輝くなど、非の打ちどころがない形でルーキーイヤーを締めくくった。