2020年シーズンを持って現役引退を決断した佐藤寿人(ジェフユナイテッド千葉)。J1歴代2位のゴール数を記録した“ストライカー”は、かつてサンフレッチェ広島に12シーズン在籍した。ここでは、『広島アスリートマガジン』誌上に掲載された数々のインタビューから厳選し、佐藤寿人のサッカー人生を本人の言葉と共に振り返っていく。

 他を圧倒するペースでゴールを量産した佐藤は、2013年シーズン中に10年連続二桁ゴールという前人未到(当時)の記録を打ち立てた。ストライカーの本能が呼び覚ますゴールへの嗅覚と飽くなき探究心。30歳を超えても、なお進化を続けた佐藤の2013年シーズンの声をお届けする。

2度のハットトリックなど、2013年シーズンもゴールを積み重ねた佐藤寿人選手。

◆Jリーグ通算300試合出場を達成

— 前年優勝チームとして挑む今季も、サンフレッチェは優勝を狙える好位置につけて終盤戦に入っています。

「シーズン序盤はACLと並行しながらだったので、リーグ戦で上位に食い込むことができませんでしたが、少しずつ自分たちのサッカーができるようになってきたことで勝ち点も積み重ねることができました。ただ、昨季の優勝によって周囲のサンフレッチェを見る目が大きく変わったことで、結果を出す難しさも感じています」

— 夏場の苦しい7月にはリーグ戦5連勝するなど、快調に勝ち点を積み重ねることができました。

「90分通して運動量を落とすことなく試合を進めることができていましたし、全体的に失点が少なかったと思います。楽な試合はひとつもありませんでしたが、内容としては勝つべくして勝った試合だったんじゃないでしょうか。ただ同じようにやれば勝てると思っていた8月は運動量がなかなか上がりませんでした」

— 8月の不調はサンフレッチェのサッカーのベースとなる運動量が落ちたことが原因だったと感じているのですか?

「7月は走り勝てていた上に、質の良いプレーができていたからこそ、勝つことができたと思います。でも8月は運動量が落ちたことで、勝つサッカーというよりも負けないサッカーをしようとどこかで大事になり過ぎていたように感じます。まずは勝ち点3を狙って次は勝ち点1を取ることが大事なのですが、最悪勝ち点1、良ければ勝ち点3という考えになってしまっていたのかもしれません」

— 8月17日の第21節・名古屋戦では通算300試合出場という節目を迎えました。

「うれしいんですけど、試合数だとあまりピンとこないですね。それよりも1点でも多くゴールを決めたいという思いの方が強いです」

— ストライカーにとってゴールとは、やはり特別なものですか?

「得点への意欲がなくなれば自分ではなくなるようなものです。チームが勝つことが一番うれしいですけど、得点の喜びを知っている者であればゴールを取り続けたいと思うだろうし、そう思い続けて辞めていくんだろうなと思います」