浅野拓磨の台頭などで2014年シーズンから途中交代が目立つようになった。

◆与えられた時間で自分の力を出し切る

—夏場、試合に出られない時期がありました。佐藤選手にとって、これまで経験したことがないことであったと思います。

「どういった選手を使うのかというのは監督が決めることですし、力のある選手が試合に出られるものだと思っています。その時期に監督とぶつかったこともありました。サッカーの世界ではよくあることですし、自分を出せなければこの世界では生きて行けません。そこで言いたいことを言わずにいたら何を考えているか分からない選手になってしまいます。もちろんチームとして上手くいっていない時期でもありましたし、そこで良い戦いをできれば良かったんですけど、そこはチームとしても、個人としても上手く対応できなかったですね」

—試合に出ることができないストレスもあったのではないでしょうか?

「ベテランと言われる年齢になってきている中で、出場時間が少しずつ減っているという部分ではストレスはありました。点を獲っていても勝っていても出場時間が限定されてしまうということは監督とも話をしていて、自分でも理解している部分でもあります。ただそれが当たり前になってしまうと自分もストレスを感じてしまいますし、消化できていない部分でした。たとえば後半がスタートして15分で代えられれば、『あと何分で代えられるんだろうな』というように思いますし、そこは難しい部分ではありました」

—フル出場ができない状況において、どのように気持ちの切り替えをされたのですか?

「ずっと90分出てやってきて、その中の駆け引きでどう点を獲っていくかということ考えてやってきていました。なので『90分という考えを捨てよう』と思いました。そうすることで『ストレスが溜まらないようにプレーする』という考えに変わりました。そこからは与えられた時間で自分の力を出し切ることに専念できるようになりました。100あるエネルギーを90分でコントロールするとすれば、スタートでできるプレーと、中盤、終盤でできるプレーが全く違ってきます。そうなると常に余力20~30を残しています。そこで交代すればやっぱりストレスが溜まります。そうであれば、途中交代するまでに100の力を使い切っておこうという考えです。そうすることでチームのためにハードワークができたと思います」

— 9月からは再びスタメンとして試合出場する機会が増えました。その時期、佐藤選手に対してのサポーターの声援の大きさを感じました。

「正直、試合に出る機会がなければ、チームを出ていくことを考えなければいけないかなと思う時期もありました。もちろん広島でずっとプレーし続けることが自分の一番の願いでもあります。でも必要とされないのであれば、出ていくのはサッカーの世界では普通のことでもあります。そういう選択肢も少しずつ考えなければと思っていました。でも、出場したときのサポーターの声援は素直にうれしかったですし、自分に対しての声援を目にしたり聞いたりしていると『出場機会がなくても、広島でやりきってもいいかな』というように思えました。試合に出られなかった時期というのは、『選手としてどこでプレーすることが一番幸せなことなのか??』ということを考えさせてもらった良い機会になったと思います」