無限の可能性を秘めてプロ野球の世界に入る新人選手。人生の節目となる1年、ダイヤの原石が抱いているのはどんな思いだったのか。カープの現役選手のルーキー時代を振り返る本企画。今回取り上げるのは、2020年シーズン後半、先発ローテの一員として頭角を表した中村祐太。プロ1年目の初夏に行った独占インタビューをもとに、当時の思いを振り返っていく。

2013年ドラフト5位でカープに入団した中村祐太投手。プロ1年目は、三軍強化指定選手として鍛錬を積み、プロ野球選手として戦っていくうえでの心技体を鍛えた。

◆思い通りにゲームを動かせるピッチャーになりたい

 2014年シーズン、ドラフト5位でカープに入団した中村祐太。この年唯一の高卒ルーキー投手のプロ1年目は、体と心を鍛える大切な準備期間となった。

「まだ試合に慣れていないので、プロになったという実感はないんです。ただ、先輩たちへの気配りが高校時代は全くできず、怒られたこともあったんですけど、そういう気配りとかはできるようになってきたと思います」

 入寮、自主トレ、キャンプと初めての経験が続く毎日。高校時代までとは違う練習に戸惑いをみせることも多かったという。

「大きな違いを感じたのは練習中の休憩時間が短いことですね。あとは練習内容が濃くて、短い時間に多くのトレーニングをしたりと、最初はペースが早すぎて戸惑ったんですけど、今は慣れてきました。抜くところをつくってはいけないと思うんですけど、抜くところは抜かないと全部全力でやっていたらケガに繋がるので、ペース配分も考えるようになりました」

 試行錯誤を続けながらもプロでの時間を重ねるうちに、次第に肉体にも変化が出てきた。中村自身が課題として捉えていた体幹は力強さを増し、スタミナもパワーも向上。当初は、練習の途中で疲労がたまり、力を出さないといけないところで出せないことが多かったが、その体の使い方にも徐々に慣れていった。

 初のキャンプを駆け抜けたあとは、二軍の試合には同行せず、三軍強化指定選手として練習を続けた。そして、5月には、初めて対外試合(ソフトバンク三軍との練習試合)に登板。その後、BCリーグ福井との試合でも投げ、経験を重ねた。

「ソフトバンク戦のときは、初めての対外試合だったので気持ちもたかぶっていて、強気に押せました。ただ、福井のときは自分の準備不足もあって、心に隙があったかなと感じています。油断すると高いレベルではすぐダメな結果に結びつくことが分かったので、それはいい収穫だったと思います」

 プロの世界では隙を見せると一気に押し込まれてしまう。実戦を通して感じた準備不足と心の隙は、中村の焦りから生まれたものだった。

「何回から行くぞと言われたのに、ブルペンに入るのが遅かったり、急いで肩をつくり過ぎたりで、心の余裕ができなくて、焦った状態でマウンドに上がったんです。焦りですよね……。調整方法はまだ分からないことばかりですが、状況に応じて出番がくるのは分かるので、気持ちの準備だけは常に切らさずにしておくのが、一番大事かなと思います」

 マウンドでは気持ちを強く持ち、自分を持ち味を100%出すことを意識した。プロ1年目で追い求めたのは、持ち味である、キレと伸びがあるストレート。この最大の武器を、思い通りにコントロールできるように技術を磨いていった。

「理想は打たせて取る。自分の思い通りにゲームを動かせるピッチャーになりたいなと思います。まずは体を強くして、早く結果を出して一軍から声がかかるように頑張ります」

 プロ1年目の独占インタビューで一軍への思いを話してくれた中村だが、デビューするのはプロ4年目の2017年。この年の5月3日の中日戦(マツダスタジアム)でプロ初登板・初先発を果たすと、見事にプロ初勝利を挙げた。プロで3年間、着実に積み