◆攻撃的な守備と走塁を定着させ、機動力野球を復活

2016年の外野守備走塁コーチを務めた河田雄祐コーチ。2021年からヘッドコーチとして再びカープのユニホームに袖を通すこととなった。

【河田雄祐コーチ(2016-2017年)】
最後まで選手と付き合っていくことがコーチの役割だと思います
(広島アスリートマガジン 2016年9月号)

 2016年、かつて赤ヘル戦士としてカープで戦っていた河田雄祐氏が、長年コーチして活躍した西武から20年ぶりに古巣に復活。一軍外野守備走塁コーチに就任し、守備と走塁の改革に着手した。

 河田コーチは、当時のカープ野手陣の守備・走塁について「かなり寂しい部分があると感じていました」と指摘。それを払拭するため、積極的に選手とコミュニケーションをはかりながら、2015年シーズン終了後の秋季キャンプから厳しい練習を選手に課していった。

「外野守備というのはコツさえ掴んでしまえば、内野ほど繊細ではありませんし、打球判断も自然と体が動くようになるものです」(『広島アスリートマガジン』2016年9月号)

 外野の守備で選手に意識付けしたのは“一歩目の意識”。前方向の打球処理は、一瞬の迷いが命とりになるため、安全に処理するのが無難だが、失敗を恐れずトライする気持ちを選手に根付かせ、攻撃的な外野守備をチームに定着させていった。

 また、河田コーチは、守備同様に、チームに走塁意識の変化を加えていった。その結果が数字としてあらわれたのが“盗塁数”だ。2015年はリーグ4位の80盗塁だったが、リーグ優勝を果たした2016年はリーグトップの118盗塁を記録した。

 38の数字の上積みを生んだのは、盗塁への取り組み方を変えることだった。

「技術的なことを言うと、普段スチールをしない選手は、牽制でアウトにならなければ良いという考えが多いんです。なので、まずは『牽制がないとして、二塁にタイム走をするとしたら、どういう構えを取るか?』という部分の練習から始めました」(『広島アスリートマガジン』2016年9月号)

 まずはしっかりとスタートを切ること。その意識改革は、目に見えない部分にもあらわれた。すべての選手が常に先の塁を見据えた走塁を心がけたことで、打線に良い流れが生まれ、相手守備陣が驚異を感じる攻撃を展開していった。

 河田コーチが施した改革は、外野守備力の向上だけにとどまらず、カープ伝統の“機動力野球”を復活させるキーマンとしても大きな役割を果たした。

 また「私は最後まで選手と付き合っていくことがコーチの役割だと思います」と話すなど、選手と積極的にコミュニケーションをとり、チームの空気を変える役割も担った。