『広島アスリートマガジン』では創刊以来、カープの選手、指導者、OBなどの数々のインタビューを収録してきた。ここでは誌面上に残された無数の言葉を振り返っていく。

 今回は2016年、25年ぶりの優勝を成し遂げたカープを支えた2人のコーチの言葉に迫る。

◆打撃陣の意識改革を遂行し、強力カープ打線を形成

2016年の打撃コーチを務めた石井琢朗コーチ。猛練習と意識改革でリーグNo. 1打線をつくりあげた。

【石井琢朗コーチ(2012-2017年)】
守備と攻撃は表裏一体だと感じています。考えていきたいのは守備側からの目線での攻撃です
(広島アスリートマガジン 2016年10月号)

 打撃不振を解消するため、前年まで一軍内野守備走塁コーチを務めていた石井琢朗コーチが、2016年から一軍打撃コーチに就任した。石井コーチがまず取りかかったのは、かつて務めていた守備走塁コーチとしての経験を生かし、得点力不足を解消するきっかけを探ることだった。

「守備と攻撃というのは表裏一体だと感じています。肩書が打撃コーチになりましたが、見方としては守備側からの目線での攻撃。どういう攻撃なら得点が上がっていくかと考えました」(『広島アスリートマガジン』2016年10月号)

 打撃コーチに就任して臨んだキャンプでは、野手陣は朝から夜までバットを振り続けた。石井コーチがテーマに掲げたのは、“三振を減らす”こと、そして、“振り込んで力強く振る”こと。石井コーチのアイデアで、文字を入れた球を打つなど、“遊び”の意識も取り入れ、野手陣は量をこなし、打撃フォームをつくりあげていった。

 また、石井コーチは打線の意識改革にも取り組んだ。根付かせようとしたのは“つなぐ意識”。シーズン中、菊池涼介は「無死二塁であれば“なんとか右に転がす”」と口にするなど、たとえアウトになろうとも選手たちは打線としての流れを意識するようになっていった。

 石井コーチがもたらした結果は、数字としてはっきりとあらわれた。2015年のチーム打率は.246だったが、2016年は.272まで大幅に向上。また、得点力不足に泣いた2015年はリーグ3位の得点数だったが、2016年は、12球団トップの数字を叩き出した。

「シーズンを通じて言い続けていることは、当たり前のことを当たり前にやるという凡事徹底ですね。調子が悪くても自分が今できることをやることです。長いシーズンのなかで打てないときもあるかもしれないですが、打てないときこそ、細かいサインプレーや四球を選ぶことなど、自分たちから流れを止めて変えてしまうことはしない、我慢するところは我慢して、そういうときこそ流れに乗れる準備をしておけと言ってきました」
(『広島アスリートマガジン』2016年10月号)

 飛躍的に攻撃力が向上した2016年のカープ打線。その裏には、石井コーチが先頭となって遂行した、猛練習と意識改革が存在していた。