『広島アスリートマガジン』では創刊以来、カープの選手、指導者、OBなどの数々のインタビューを収録してきた。ここでは誌面上に残された無数の言葉を振り返っていく。
今回は會澤翼と田中広輔、2人の選手会長の言葉を取り上げる。どういった思いと共に、目の前の壁に立ち向かっていったか、今もなおチームの中心選手として戦う2選手の思いに迫る。
◆正捕手として史上初の3連覇に大きく貢献
【會澤翼(選手会長:2018~2019年)】
自覚と責任を持ってやろう
(広島アスリートマガジン 2018年11月号)
球団初のリーグ3連覇を目指した2018年、小窪哲也から選手会長を引き継いだのが、キャッチャーの會澤翼だ。
前年の2017年、プロで初めて100試合をクリアし106試合に出場。扇の要として、投手陣をリードし、バッティングにおいても勝負強さを発揮し、初のベストナインにも輝いた。それだけに、名実ともにチームの顔になりつつあった會澤にかかる期待は大きかった。
「大なり小なりプレッシャーというものを感じていました。やはり2年連続優勝の中での選手会長でしたからね」
連覇という流れのなかで回ってきたバトン。意識していなくても肩に背負う重圧は大きかったはずだ。そんな會澤の迷いを消したのは、チームの精神的支柱だった新井貴浩の言葉だった。
「『お前がやれ。適任じゃないか』と言ってもらえたときに、決断することができました。新井さんにはシーズンに入ってもチームのことだったり、野球界のことだったり、いろんな話をしていただきました」
選手会長1年目となった2018年。ベテランの新井や石原慶幸、そして前選手会長の小窪のサポートを受けながら會澤はチームを牽引。また、キャッチャーとしても、バッターとしても周囲を納得させる成績を残し、球団捕手としては史上初の2年連続ベストナインを受賞。リーグ3連覇に大きく貢献し、初の胴上げ捕手も経験した。
2018年の優勝が決まったあとのインタビューで、會澤は、チームをまとめる上で心がけていたことをこう話してくれた。
「まとめるとか、そういうことは思わなかったですね。ただ、シーズン前にはみんなの前で『自覚と責任を持ってやりましょう』と言わせてもらいました。一人ひとりが自覚と責任を持ってくれたシーズンだと思います。また、選手会長になったことで、より人を見るようになりましたし、人間的な視野も広がったと感じています」
選手会長を経験したことで、逞しさを増した會澤は、2019年にはプロ最多の126試合に出場し初の規定打席に到達。球界を代表する捕手へと成長を果たした。