◆ケガからの復活を果たしたカープのニューリーダー

【田中広輔(選手会長:2020年~)】
諦めるのではなく、積み重ねることが大事
(広島アスリートマガジン 2020年5月号)

2020年から選手会長を託された田中広輔選手。若い選手が増え、新しく生まれ変わりつつあるチームを、プレーと言葉で引っ張っり続けている。

 投手コーチを務めていた佐々岡真司が新しく監督に就任した2020年。この年から選手会長を任されたのが田中広輔だ。

 その前年の2019年は田中にとって苦しいシーズンだった。開幕から不調が続き、フルイニング出場の記録がストップ。そして、右膝を手術し、長期離脱を余儀なくされた。怪我からの完全復活を目指した2020年シーズン。ショートのレギュラー再奪取と共に、チームリーダーとして、プレー以外の面でもチームを引っ張る役目を期待された。

「會澤さんには『次の選手会長を』と言われながらやっていたので、僕自身はずっと覚悟をしながら過ごしていました。なので正式に決まったときは、すぐに『やってやるぞ』という気持ちになれましたね」

 キャンプ、実戦練習などを含めて、選手会長としてこれまで以上に周りを見るようになった田中。以前は、背中でチームを引っ張ることを意識していたが、黒田博樹や新井貴浩と共にプレーしたことで、言葉にして発信する大切さを再確認。コミュニケーションの手法を変えていった。

「以前よりも、より一層周りのことを見るようになりましたし、その中から改めて気付くことも多いです。そこで気付いたことがあれば口に出して言う場面も増えましたし、そういったところは特に意識している部分です」

 佐々岡監督が就任時に掲げた『一体感』。精神的支柱だった黒田と新井が引退し、一軍ベンチには若い選手が増え、チームは転換期を迎えていた。それだけにフルイニング出場を続け、3連覇を支えたチームリーダーの存在は、『一体感』を育む原動力となった。

「若い選手が多いチームなので、どうしても脆い部分というのはあると思います。最初は何をやってもうまくいくことがないかもしれませんが、そういう時こそ諦めるのではなく、積み重ねが大事になってきます。そういったことを1年間言い続けながらプレーしていきたいと思っています」

 記憶にも新しい2020年、コロナ禍の影響で、プロ野球開幕が延期となるなど、前例のないシーズンを戦うこととなった。チームは惜しくもBクラスに終わったが、田中自身はショートのレギュラーの座を奪い返す活躍でチームを鼓舞。プレーと言葉でチームを引っ張り続けた。

 FA権を行使せずカープ残留を決断した2021年は、新たな気持ちで臨むシーズンとなる。田中がリーダーとしてどんな姿をみせてくれるか、楽しみに見守りたい。