昨季限りで現役を引退し、今年からプロ野球解説者として活動している石原慶幸氏がカープの一軍沖縄キャンプを視察。扇の要として長年チームを統率し続けた男が、春季キャンプを徹底的に分析します。投手編に続き、今回は野手編をお届けします(第2クールまでの練習を見たうえでの解説です)。

◆打線の鍵を握る鈴木誠也と堂林翔太

 

天候に恵まれたこともあり、二人ともしっかりとフルメニューをこなし、良い練習ができていると思います。堂林選手は、昨年キャリアハイに近い成績を残したことが大きな自信になっていると思いますし、キャンプでの姿を見ていると、何をやらなければいけないか、本人の中で課題も明確になっているんじゃないかと思います。

 鈴木選手に関しては、まずはケガなくキャンプを過ごしてほしいですし、調整に関しては心配していません。ただ、これまでとは意識が変わったと感じるシーンがありました。キャンプ初日の一番最初の声出しを鈴木選手がしたのですが、今までは先頭に立って、自分の気持ちを言葉にする選手ではありませんでした。今シーズンから野手のキャプテンを任されたということで、心境の変化があったのかもしれません。

 初日の鈴木選手の行動を見たとき、キャプテンマークを背負ったからには、先頭に立ってチームを引っ張るという決意と責任を、キャンプスタートのタイミングで、首脳陣や選手、スタッフに示したように感じました。そういった意味でも、このキャンプ初日の声出しは、チームにとっても、鈴木選手にとっても、良い風をもたらす行動だったと思います。

◆“タナキク”コンビの復活に期待

 

カープ野球復活の鍵は、田中選手と菊池選手の2人が握っていると言っても過言ではないでしょう。

 3連覇を果たしたときのように、この2人が、1番と2番にどっしりと座り、グラウンドを駆け回っているときは、カープが目指す機動力を活かした野球ができているイメージがあります。それは僕たちだけではなく、他球団にもそのイメージを植え付けることができていると思います。

 田中選手は一昨年に手術した右膝の状態が気がかりですが、キャンプでは体の状態の良さがうかがえるシーンがありました。実戦を想定した走塁練習で、果敢にスタートを切っているのを見て、この時期にこれだけ走れているということは右膝のコンディションはかなり良いんだろうと思います。もし膝の状態が悪ければ、この段階の練習では頻繁にスタートを切ったりしませんからね。

 菊池選手に関しても、動きを見ていると、例年になく良いコンディションでキャンプを過ごしていると感じました。1番・田中、2番・菊池の“タナキク”コンビが復活すれば、守備同様に打線も落ち着きます。3連覇を成し遂げた時のように、攻守においてチームを引っ張ってもらい、機動力を活かしたカープの野球を展開してほしいと思います。