守備でも評価を高めて三好の一軍出場機会は増加していき、18年には自己最多の70試合に出場。スタメンはもちろん、内野の守備固めとしても首脳陣の信頼感を高めていった。一軍でチームに貢献するため、三好は自らの役割を考え抜いた。その結果、打席での意識も変わっていった。

 「守備固めで試合に入って、その後の打席で簡単に凡退するわけにはいきません。選球眼を意識しましたし、ストレートをファールにしながら変化球にも対応して粘っていくような練習もしました」

 球を長く見て、逆方向に打つ。速い球にはファールでの粘りも意識する。移籍したセ・リーグでも、そのアプローチは威力を発揮した。出場機会や打席数も増え、無駄な力みを取り除くことにも成功した。ただ、三好はカープでの練習の中で、次なる段階に挑んでいる。東出輝裕一軍打撃コーチは、こう語る。

 「引き付けて打つ中で、軸足に体重が残り過ぎています。ポイントを近くし過ぎたことで、変化球にバットが届かないケースが出ていましたし、サードゴロが多いんです。だから、もう少し上体を投手側に入れていき、左足をしっかり使うことです。そうすることで、同じアウトでもライトライナーのような打球が見られるようになってきました」

 もちろん、三好自身も狙いは明確に理解している。

 「前のポイントで打とうとする中で、左膝が突っ張っていました。しっかり入っていって、変化球も曲がる前に打つような意識にしています。それと高めに浮いてきたボールは逃さないことですね」

 26歳。守備の人なのか、打撃の人なのか、決めてしまうには、まだ若い。将来の可能性は多くの指導者が口を揃えるところだ。三好匠は出合いの数だけ進化し、チャンスの数だけ成長する。新天地の秋、背番号35は目を輝かせながら、シーズン最終戦まで全力で駆け抜ける。

取材・文/坂上俊次(RCCアナウンサー)
1975年12月21日生。テレビ・ラジオでカープ戦を実況。 著書『優勝請負人』で第5回広島本大賞受賞。2015年にはカープのベテランスカウト・苑田聡彦の仕事術をテーマとした『惚れる力』を執筆した。