コロナ禍のなか、2021年のプロ野球ペナントレースが無事に開幕した。まずまずの滑り出しを見せたカープだが、ファンが気になるのはやはり開幕戦での痛い黒星。カープOBの笘篠賢治氏が、開幕カードで垣間見えた課題と収穫について言及する。

故障による出遅れはあったものの、開幕戦に合わせしっかり状態を上げてきた坂倉将吾選手。

 今回は開幕カード(対中日)を振り返ってみたいと思います。まずは初戦。4対0でリードしていた8回表、レフトの松山をそのまま守備につかせて、レフト前の打球をファンブル。それをきっかけに5点取られて逆転負け(6対7)を喫してしまいました。

 あの場面は松山が悪いとかではなく、「この試合は4対0で勝つんだ」とディフェンスに切り替えないといけない場面でした。エース・大瀬良を先発に立てて、4点のリードを守り切る。その裏の回に松山に打順が回ってくるから守備につかせたのだと思いますが、それでもあそこは守り切る野球にシフトしなければなりませんでした。たとえ8回表を0点で抑えて、次の打席で松山が打っていたとしても、です。

 レフトに打球が飛んでくるかどうかは別にして、守備固めをすることで、みんなが「守りきるんだ」という意識になりますから。その上で打たれてしまったなら、それは仕方がないことです。最善の策を講じて守り切れなかったら、これはもう切り替えようと思えますからね。

 私の現役時代、1992年、1993年とヤクルトと西武が2年連続で日本シリーズで対戦しました。後ろに良い投手がいるという前提で試合が進んでいく中で、神宮球場で西武はデストラーデにレフトを守らせていました。秋山、清原、デストラーデというのは、いわば打線の核の選手ですよね。

 でもリードしている展開で、西武は6回から私の兄(誠治)を守備固めで起用してきました。当時の西武の強さの一端が、このあたりの采配にも現れていると言えるでしょう。

 今季は時間短縮で延長戦がありません。すなわち、9回までに決着をつけないといけません。それなのにベンチに控え選手たちを、たくさん残していたらもったいないですよね。足のスペシャリストや守備のスペシャリストといった選手たちは、今年は大事な局面での出番が増えていくはずです。いかにポイント、ポイントで最善の策をとるかが重要になってくるでしょう。