今季カープは新たに佐々岡真司新監督が就任し、V奪還を目指すシーズンに臨む。そこで新監督就任に際して、過去の『広島アスリートマガジン』特集から歴代監督を振り返っていく。今回は2018年4月号で特集した『OBが語るカープ歴代監督』より、山本浩二監督編をお送りする。

 黄金期を引き継ぐ形で、89年からカープの指揮を執ることになった山本浩二元監督。80年代を支えたベテランと、野村謙二郎、佐々岡真司ら若手の力を融合させ、就任3年目にはチームを5年ぶり6度目のリーグ優勝に導いた。現役時代、首脳陣として山本元監督と共に6度の優勝を経験した木下富雄氏が、当時の山本野球を振り返る。

木下富雄(きのしたとみお)/1951年5月7日生、埼玉県出身。73年ドラフト1位でカープに入団。黄金時代のユーティリティープレーヤーとして長年活躍。87年限りで現役引退。その後、山本浩二監督の元で長年コーチを務めた。

 山本浩二さんとは現役時代から長い付き合いになりますが、お互い選手時代に5度の優勝、監督とコーチという間柄で1度、計6度も一緒に優勝に関わることができました。一軍で6回すべての優勝を経験したのは浩二さんと私だけなので、不思議な縁を感じます。

 浩二さんが最初に監督に就任されたのは89年でした。阿南準郎さんが監督を退任されることが決まり、翌年に浩二さんが監督になるというのはある程度分かっていましたし、みんな当然そうなるものだと感じていたと思います。

 一番印象的なのは、浩二さんの監督就任直後の秋季キャンプです。当時私は二軍守備走塁コーチでしたが、一軍と二軍の首脳陣も一緒になり秋季キャンプに臨みました。チームの主力には髙橋慶彦、山崎隆造、達川光男、長嶋清幸らがいましたが、皆30歳前後。浩二さんが見た印象では、『若いけれど動きが鈍っている』というものでした。

 そしてそのキャンプでは肉体改造をテーマに、とにかくハードな練習を選手たちに課しました。通常、秋のキャンプは個々の長所を伸ばしたりするものですが、私の記憶では選手は陸上選手のようにずっと走っていたように思います。コーチであった私たちも、朝から晩まで選手に付き合うわけですから、しんどい思いをしました(苦笑)。