2年ぶりの通常開催となった今夏の全国高校野球選手権広島大会は、広島新庄が5年ぶり3度目の優勝で終えた。コロナ禍の影響を乗り越え、広島の高校球児たちはそれぞれの思いを持って夏の戦いを迎えていた。ここでは広島大会を盛り上げた3年生をクローズアップし、彼らの思いを聞いた。今回は、5年ぶり3度目の甲子園出場を決めた広島新庄のエースで4番・花田侑樹の夏に迫る。

投げてはエース、打っては4番。広島新庄の大黒柱としてチームを牽引した花田侑樹選手。

◆右腕エースは“4番として”広島大会優勝に貢献

 2021年夏の広島大会、広島新庄は安定した戦いぶりを見せ、新チーム結成後は広島県内無敗で3度目となる甲子園出場を決めた。チームを牽引してきたのがエースとして背番号1を背負い、打っては4番、投打の大黒柱である花田侑樹(3年)だ。

 彼は投手への強い気持ちを持っている。「背番号1を背負って甲子園で投げるのがずっと目標でした」。2年時の夏季広島大会、投手は同学年の左腕・秋山恭平が中心だった。「自分は投げられずベンチで悔しい思いだった」。高い打撃センスを持つ花田はそれまで野手を中心にプレーしていたが、宇多村聡監督へ気持ちをぶつけた。「投手に専念したいと言ってきたので、彼の強い覚悟や思いを感じました。ですが4番でもあるので、そちらも疎かにするなと。人と同じことをやってたらダメだと。そう伝えました」(宇多村監督)。

 新チームとなり花田は背番号1を背負った。2年秋の秋季大会で花田は9試合に先発登板。「投げていくうちに成長していると自分でも感じていました」。見事に優勝を果たして自信を深め、3年春には初の甲子園のマウンドでも好投。「春の甲子園よりも球速を上げること、打者としてチャンスでしっかり打てるようにやってきました」。投手、4番として鍛錬を積みながら最後の夏を迎えた。

 広島大会では初戦の舟入戦、準決勝の西条農業戦、決勝の祇園北戦と3度先発マウンドに上がり、投手として16回を投げ7失点。「ピッチングではあまり調子が良くなかった」と振り返るように、広島大会では投手として思うような結果を残せなかったが、打撃で抜群の存在感を見せた。4回戦の安芸南戦、準々決勝の瀬戸内戦で2試合連続本塁打を放つなど、勝負強く、レベルの高い打撃を見せつけた。「バッティングはチャンスで回ってくることが多いので、そこでなんとか1本打ちたいという気持ちでした」と語るように、4番として結果を残し、打者としての存在感を見せつけて、広島大会優勝に大きく貢献した。

「夏は勝つことが大事なので、そこをしっかり勝ち切って、甲子園まで行けて良かったです」。自身2度目となる甲子園への切符をチームの主力としてつかみとり、この1年で投打共に選手として大きくレベルアップを遂げた。

 春のセンバツに続き、自身2度目となる甲子園。初戦は強豪・横浜と対戦となった。先発マウンドに立った花田は、横浜打線を相手に140キロを超えるストレートを軸に強気の投球を展開。7回途中まで100球を投じ、被安打5、無失点と広島大会で味わった投手としての悔しさを晴らす好投を見せた。

 チームは9回、勝利目前で逆転サヨナラ負けと悔しい負けとなったが、広島新庄のエースして素晴らしい戦いを演じた花田。この先、彼はどのような飛躍を見せてくれるのか。今後も彼の姿から目が離せない。