2年ぶりの通常開催となった今夏の全国高校野球選手権広島大会は、広島新庄が5年ぶり3度目の優勝で終えた。コロナ禍の影響を乗り越え、広島の高校球児たちはそれぞれの思いを持って夏の戦いを迎えていた。ここでは広島大会を盛り上げた3年生をクローズアップし、彼らの思いを聞いた。ここでは、盈進のトップバッターとして打線を引っ張った大久保航希の思いに迫る。

盈進のトップバッターとしてチームを牽引した大久保航希選手。

◆グラウンドを駆け巡った盈進打線の切り込み隊長

 レギュラーの多くが1年からベンチ入りし、中国大会に2回出場するなど、経験豊富なメンバーが揃った今大会の盈進。センターを守る大久保航希(3年)は、俊足を生かした守備範囲の広さでチームを支えてきた。

 中学時代は内野を守ったが、高校で外野に転向。「肩が強くて足の速い選手。中学時代にサードを守る様子を見ているとどこか窮屈そうで、ショートや三塁線の存在が邪魔という印象だったので、何もないところで思う存分走らせてみようと思いました。左中間・右中間・前・後ろと全ての打球に追いつくし、一番難しいセンター後方のフライにもすぐに対応できて、メキメキと頭角を現してくれました」と佐藤康彦監督はその理由を明かしてくれた。

 打っては出塁率が高い1番として打線を牽引し、50メートル5秒6の俊足を活かして幾度も好機を演出した。「先頭バッターとして出塁して、走って、返してもらってホームベースを踏むのが自分の仕事です。どんな形でもいいので塁に出て、盗塁をして、グラウンドを駆け回りたいです」と1番としての役割に徹してきた。

 チームとしてはバント処理など小さなミスをなくすため、さまざまなシチュエーションを繰り返し練習。その中で大久保はどんな状況にも動じずプレーできるよう準備を重ねてきた。

 盈進野球部での3年間について「仲間と共に『自分で考え、自分で行動する』ことを学んで、また野球は犠牲の上に成り立っているので、本気の『犠牲心』をもって行動ができるようになりました。武器である足を活かすために、ショートダッシュや筋トレなど基礎的なことを確実にやってきました」と振り返る。アンダーシャツ越しにもはっきり分かる鍛え上げた筋肉が、野球に熱中した日々を物語っている。

「出られないメンバーのためにも、どんな相手にも気を抜かず、自分たちが主役になって、『一戦必勝』で甲子園を目指します」と意気込み迎えた最後の夏。惜しくもベスト16に終わったが、大久保は全4試合を戦って5安打2盗塁をマークし、全試合出塁を記録するなど1番としての役割を果たした。

 卒業後も大学で野球を続けたいという大久保。さらなる進化を目指す姿に注目だ。

文:滝瀬恵子