昨年は独自大会の開催となり、今年もコロナ禍の影響を受ける高校野球界。今年は2年ぶりの通常大会開催となるも、さまざまな面で制約もあった。コロナ禍における第103回全国高校野球選手権広島大会の運営について、広島県高野連理事長の板森匡祐氏に話を聞いた。

様々な制約の中、最後まで無事に開催された高校野球広島大会。

◆まずは安全な運営を第一。夏に向けて入念な準備

ーコロナ禍の影響で広島大会の運営にもご苦労があったと思います。県高野連として、ここまでどのように進めてこられましたか?

「コロナ禍が原因で試合に出られない状態だけは起こらないよう進めてきました。また一般の方々にもできるだけ見ていただきたいので、安全を最優先に考えて球場の中でできる限りの対策と入場制限を行いました。さまざまな事態を想定し、出場校の生徒さんたちがコロナ禍以前のような応援ができない事を申し訳ないと思っています」

ー観戦に来てもらうことについて、最後まで議論されていたのでしょうか?

「基本的にどうすれば安全に観戦していただけるかを考え、夏の大会に一般の方も入れる形をなんとかつくっていこうと進めていました。春季大会の段階で一般の方も入れる形を実施し、流れを各球場でつかんでもらいながら、課題や問題点を確認していました」

ー高校野球の風物詩とも言える吹奏楽の音がない風景をどう感じられていましたか。

「寂しさはあります…できれば吹奏楽を入れた状態でいろんな応援をしていただきたかったです。緊急事態宣言中も夏の大会を開催する方向で考えていました。応援をどうするかと考えたときに、あの状況の中での判断は厳しかったです。まずは、試合をできるように、それを第一に考えていました。また、もう一つの理由は熱中症対策です。緊急事態宣言という中で、各高校はクラブ活動に制限があったと思いますし、体育の授業も多少の制限の中で実施している状況。日光を極端に浴びていないのは危険です。応援をご遠慮させていただいたのは、生徒たちを守るためにコロナ対策はもちろん、熱中症対策という側面も考えての判断でした」

ー広島大会の試合では拍手での応援が印象的でした。

「やはり制限がある中でいつもの形ができないとなっても『こういう形だったらできる』ということをすごく考えてやってくれると感じました。工夫しながらで観戦をしている状況を見ると、彼らなりの対応に感心させられます。そういう状況の中で〝選手ファースト〟を考えると、とにかく試合をして、選手たちがグラウンドでベストパフォーマンスできるようにすることが大事になります。そういう意味では、応援してくれていた彼らには本当に感謝しています」

ー選手側としてはどのような対策をされたのでしょうか?

「人が混ざらない、不要な接触を防ぐという点で、いつもより厳格に『前のチームが出てから次のチームが入る』という完全な入れ替えを行いました。そのときにスムーズに入れ替えしていかないといけないので、メガホンなど応援に関する道具を持ち込んでいると時間がかかります。早くスムーズに行うという面を考慮した上で、そのような選択をさせてもらいました」

ー選手たちの動きについて、コロナ禍の前後で大きく変わったことはありますか?

「試合が終わったら速やかに球場から移動してもらうことです。どの高校にも保護者や応援する野球部員に向けた最後の伝達を学校に帰ってやってもらうということをお願いしています」

ー天候の心配もありましたが、大会はほぼ予定通りに日程を消化しました。

「天候の影響で試合日がズレることもありましたが、決勝まで開催することできたのは本当に良かったと思います」 ー球児のみなさんの動きは思った以上の活躍だったという印象でしょうか? 「各高校は緊急事態宣言で練習試合実施も難しい状況でご苦労され、その中で大会を迎えることになりました。心配だったのは大会途中で調子が悪くなる選手が出てしまうことでした。今回は救急搬送しなければならないという事態は発生しておらず、選手や監督さん、顧問の先生方がその部分にもすごく気を遣いながら試合に臨んでいただいてるのだなと思いました。何も策を考えていなければ救急搬送事案も発生していたかもしれません。各校のご対応には頭が下がる思いです」

ー今年は2年ぶりの通常大会開催となりましたが、改めて気づかされたことはありますか?

「何もないときに当たり前だと思ってることが、当たり前ではないんだというところです。大会は毎年開催されて当たり前という感覚でずっときていましたが、昨年それは当たり前なことではなくなりました。今年も大会を開催するために相当準備と対策を考えた上で運営してきたので、改めて開催できることに感謝しております」

ー最後に、理事長としては今後はどのような運営を心がけていきたいとお考えでしょうか。

「大会は県内の各球場が現場となります。ここまでコロナ感染の場になっていないのは、生徒をはじめ先生方、審判委員の方々、実際試合に来られる学校の意識の高さだと思います。今後は秋の予選も始まりますが、本年度中の大会は、現在の防止対策ラインを下げることなく、引き続き無事にみなさんの安全を第一に考えて運営したいと考えています」

取材・文=広島県高校野球ダイジェスト編集部