高い能力を備えたDFとして評価を高めている荒木隼人。 2009年に広島に加入し、チームに欠かせないプレーヤーの一人に成長を果たした荒木に、今シーズンの意気込み、そして背番号への思いなどを聞いた。

サンフレッチェ広島の堅守を支えている荒木隼人選手。

覚悟を持って偉大な4番を継承。リーグ後半戦も強敵FWに挑む

—プレーについてお聞きします。ご自身のストロングポイントはどんなところだと感じていますか?

「空中戦や対人への強さだと思っています。身長が186cmと高く、体格に恵まれているのも大きいですね。ただ、ステップが大きかったり歩幅が広かったりと、背の高さがウィークポイントになってしまうこともあります。サンフレッチェに入ってからは、池田誠剛フィジカルコーチの指導のもと、ステップワークの練習などで改善できるように取り組んでいます」

—体が柔らかいとのことですが、それも優位に働いているのではないですか?

「柔軟性があると可動域が大きくなるので、体の無理が利くという利点があると思います。柔軟のストレッチは広島ユース時代から欠かさず続けていて、180度開脚して地面にペタッと胸をつけることもできます。元々ケガをしにくいタイプなのですが、柔軟性を高めることでさらにケガをしにくくなっていると思います」

—今シーズンを迎えるにあたり、3バックから4バックへシステム変更を行いましたが、5  月23日のC大阪戦(ヤンマースタジアム長居)から従来の3バックに戻しての戦いが続いています。

「サンフレッチェはチームとして3バックに長く取り組んできましたし、僕自身も加入から2年間は3バックでやってきたので、4バックに慣れるまで時間がかかりました。チームには3バックを長く経験している選手が多いので、やりやすさや阿吽の呼吸というのが各ポジションにあると感じています。3バックと4バック、どちらが良いということではなく、それぞれに特徴があるので、今季取り組んだ4バックも、もっと高いレベルで実践できるようにしていきたいと思います」

—荒木選手はほとんどのリーグ戦でフル出場されています。夏までの17連戦を戦ってみていかがでしたか?

「回復力には自信がありますが、17連戦の最後の方は本当にタフな戦いでした。とにかく試合に向けてコンディションを整えることが最優先で、練習をする時間をしっかりと取れませんでした。この夏の中断期間でやっと、自分のウィークポイントなど、伸ばしたい部分の練習に重点的に取り組むことができるようになりました」

—ウィークポイントはどのような部分だと思われていますか?

「パスやヘディングです。セットプレーなどチャンスの場面で、長身を活かしたヘディングで得点を奪えるようになりたいと思っています。シーズン初めに5得点を目標に掲げていましたが、今のままでは間に合わないので、ペースを上げていかなければいけないと思っています。常に向上心を持ってプレーし、もっとレベルを上げて日本代表にも入りたいです」

—シーズン前半で印象に残っている試合を教えてください

「4月18日の川崎戦(△1−1等々力陸上競技場)です。チームとして非常にハードワークができましたし、ボールに執着して戦えたと思います。川崎のFWはタレント揃い。守備は確かに大変ですが、しんどいというよりも楽しいという思いのほうが強かったですね」

—サッカーを続けるなかで影響を受けた人物はいますか?

「2019年までサンフレッチェに在籍されていた水本裕貴選手(現FC町田ゼルビア)です。僕にとってはDFの鏡といえる存在。30代半ばになってもトレーニングに励み、良いパフォーマンスを発揮されますし、そのための準備も朝早くからやっておられます。僕たちがいくら早く練習場に着いても、水本選手は、そのときにはすでにトレーニングを始められているんですよね。日本代表で活躍して、チームでも長く活躍するためには、あれぐらいやらないといけないのだと痛感させられます。水本選手がサンフレッチェで活躍されていた2012年、初優勝を飾った試合は、スタジアムで応援していたので、優勝した瞬間のことが強烈に印象に残っています。めちゃめちゃうれしかったです」

—荒木選手が今シーズンから着けている背番号4は、かつて水本選手がサンフレッチェで着けていた番号です。

「素晴らしい結果を残された偉大な選手の背番号を引き継がせていただくことに『覚悟』と『責任』を感じました。大学でも着けていた4番は、僕にとっては大好きで特別な番号です。決してこれまでの23番が嫌だというわけではありません。ただ、これまで以上にモチベーションを高く持ち、サッカーと向き合っています」

—最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします。

「7月3日に行われたカープ球団さんとの共同記念ユニホーム企画では、スポーツを通して広島がひとつになり、共に戦っているような雰囲気を感じることができました。プレーに派手さがある選手ではないですが、チームのために体を張って戦っているので、そこをぜひ見ていただきたいです。応援よろしくお願いします」

取材・文:前岡侑希