好成績も慢心はなし

 この年のカープ打線は打率、得点、安打、本塁打、出塁率など軒並みリーグトップの数字を叩き出し、前年の低迷が嘘のような上昇曲線を描いた。鈴木自身もルーキー時代に掲げたトリプルスリーという目標に、着実に近づいていることを実感させる数字を残してみせた。それでも本人の中での満足感は、それほど高くはなかった。

「昨季の数字だけを見れば(トリプルスリーに)近いかもしれませんが、今のままでは無理です。目の前で達成した山田哲人さん(ヤクルト)を見ていて、山田さんのように毎試合に臨んでいればああいう風になるのかなとは思うことはあります。でも経験とか技術がないと、まだまだ僕には無理だと思っています」

 神がかり的な大ブレイクを果たしながら、シーズン後の鈴木に慢心はまったく見られなかった。それどころか、より印象に残ったのは劇的な一打ではなく凡打のシーン。究極の理想として“打率10割”を掲げる男にとっては、2016年の活躍でさえ物足りないということである。さらなる高みを求めて、当時22歳の若鯉の目は早くもプロ5年目シーズンに向けられていた。

●鈴木誠也選手が初めて公認した公式MOOK、広島アスリートマガジン 2020特別増刊号『鈴木誠也 全インタビュー集』が好評発売中です。プロ入り直後の2013年から現在までの全インタビューや秘蔵カットを収録した完全保存版で、通常版にもB3サイズのポスターがもれなくついてきます。お求めは、広島アスリートマガジンオンラインショップへ!