【写真】悲願の初優勝を成し遂げ、宙を舞う古葉竹識監督。後楽園球場が歓喜に包まれた

選手たちを襲った初優勝の重圧

 山本浩二を軸に強力打線を形成し、投手陣も外木場義郎、佐伯和司、池谷が先発3本柱として大車輪の活躍を見せた。前半戦を終えた時点で、首位・阪神とはわずか1.5ゲーム差。オールスターゲームで山本と衣笠祥雄が2打席連続アベックアーチを放つと、初優勝を期待するファンの間で『赤ヘル旋風』が吹き荒れた。後半戦に入ってもカープの勢いは衰えず、夢のまた夢と思われていた優勝が現実味を帯びてきた。さすがに、この頃になると重圧を感じる選手たちも現れ始めていたという。

「初優勝の重圧もあり、寝られない選手も多くいました。そういう状況が続いたある日、大下剛史さんや(山本)浩二さんら主力が音頭をとり『みんなで飲みに行こう』と決起集会を開いたことがありました。『飲んで寝た方が次の日のためにはいいだろう』ということだったのでしょう。もう一つ印象に残っているのが、敵地で負けた帰りのバスの中での出来事です。誰が言ったか『一曲歌え!』という声があり、そこで音痴なスタッフが大声で歌うことで、雰囲気が明るくなるということもありました。シーズン終盤はチーム全体でなんとか気持ちを盛り上げ、『優勝まで踏ん張ろう』という雰囲気をみんなでつくろうとしていました」

 ペナントレースは最終的にカープと中日の一騎打ちの様相を呈し、勝負は終盤戦までもつれ込んだ。そんな状況下でカープは9月を13勝3敗4分というハイペースで乗り切り、優勝に向けての土台を強固なものとした。そして迎えた10月15日。後楽園球場での巨人戦に勝利したカープが、球団創立26年目にして悲願のリーグ初優勝を成し遂げた。

「私はベンチから試合を見守っていました。あの日の後楽園球場はカープファンで埋まり、当時はしゃもじを持って大声援を送ってくれていました。試合は1対0のまま進み、9回に飛び出したホプキンスの3ランで決まったというムードになりました。そして最終回、金城基泰が柴田勲さんを打ち取り優勝が決まりました。直後、みんなで胴上げ……のはずでしたが、ファンのみなさんがグラウンドになだれ込んできて、現場はパニック状態(苦笑)。それも今となっては良い思い出です」