FA権を保持していた選手が続々と残留を決めるなど、来シーズンに向けて戦力が整いつつあるカープ。来季は、球団史上初のリーグ3連覇を成し遂げた2016年〜2018年の「つなぐ攻撃」の復活が、チーム浮上の鍵を握っていると言っても過言ではない。

 ここでは、カープOBの笘篠賢治氏に、熱戦が展開されている日本シリーズから、カープが参考にするべきポイントを聞いた。

今季、12球団トップのチーム打率を記録したカープ。来季は得点力アップが課題となる。

◆コーチの指示ではなく打者の感性による殊勲打

 大瀬良大地と九里亜蓮の残留が決まり、ホッとしているファンの方も多いことでしょう。今年セ・リーグを制覇したヤクルトも、昨年、石山泰稚と小川泰弘を引き留めることができたのが大きかったですからね。彼ら2人が流出していたら優勝できていなかたっと思います。

 大瀬良も九里も、大型契約に甘える性格ではないと思うので、来季以降も2人で投手陣を引っ張っていってもらいたいですね。

 11月20日から始まった、ヤクルトとオリックスの日本シリーズですが、野球の醍醐味が集約されたような試合が続いています。先発投手がしっかりとゲームをつくって、中盤まではどちらに流れが転ぶかわからない展開。緊迫した試合展開のなか、どちらが先制点を奪って、勢いに乗っていけるかということで、序盤から見どころ満載です。そして、終盤はどれだけ無駄な四球やミスをなくせるか。一発の怖さも含めて、さまざまな野球の面白さが詰め込まれた試合が繰り広げられています。本当に見応えたっぷりのシリーズです。

 11月23日の第3戦で注目したのは、ヤクルトの中村悠平が5回裏に2死満塁から逆転打を放ったシーン。

 オリックスのバルガスの球はカット系の変化をするため、引っ張りにいっていたらたぶん打ち損じていたと思います。2球待って、どう攻めていくかを考え、センターから右方向中心の打撃を意識したのではないでしょうか。バルガスの3球目を、見事にセンターに運びました。

 中村自身が、打席で相手投手の球を見て、どういう方向性を持って打っていかないといけないのかをパッと切り替えたのだと思います。そういう部分はカープの選手も見習わないといけないと思います。こういった意識の切り替えは、コーチの指示ではなく、打者の感性によるものです。それを身につけていければ、選手としても、後々指導者としても生きてくると思っています。