守護神・栗林につなぐまでの7回と8回を担うリリーフ投手がシーズン終盤まで決まらなかった。開幕前にどのような勝利の方程式を描いていたのか、横山竜士一軍投手コーチにその裏側を聞いた。

春季キャンプ中、若手投手にアドバイスをおくる横山竜士一軍投手コーチ

◆期待の若手が結果を残せず栗林への継投に苦戦

 今季のペナントレースを迎えるにあたり、〝誰に9回のマウンドを任せるか〟という大きな課題がありました。昨年までクローザーを務めていたフランスアの調整が遅れていたため、昨年一軍で結果を残したケムナ(誠)や塹江(敦哉)、新人では大道(温貴)などの名前が候補にあがっていました。

 最終的に、佐々岡(真司)監督と、永川(勝浩)投手コーチと3人で話して、新人の栗林(良吏)に託すことを決めたのですが、先ほどの3投手は、クローザーにしようかと迷うほど、キャンプでは良いものを見せてくれていました。なので、勝ち試合の7回と8回は、彼らを起用すれば、なんとかなるのではないかという見込みがあったのです。

 そもそも私の中では、7回と8回を1人の投手に固定しようという思いはありませんでした。若くて勢いのある投手を起用し、9回の栗林につなげていければと考えていたのです。ただ、今シーズンを振り返った時、この勝ち継投の7回と8回のリリーフ投手が決まらなかったことが、Bクラスに沈む要因の一つとなりました。

 シーズン当初は塹江を8回に起用することが多かったですが、昨年のような球を投げることができず、思うように結果がついてきませんでした。そこからいろんな投手を起用しましたが、投げてみないと分からない試合も多く、8回はイニング別でリーグワーストの100失点。栗林に良い形でつなぐことができませんでした。

 シーズン後半になってようやく、3年目の島内(颯太郎)が8回にハマるようになりました。 昨年、一軍であれだけ貴重な経験を積んだ塹江やケムナがシーズンを通して、思うようなピッチングができなかったのは、彼らだけの責任ではなく、起用法にも問題があったのかもしれません。

 また、フランスアが、ケガで開幕に間に合わず、わずか8試合の登板に終わったのも誤算でした。栗林をどこかで休ませないといけないとなった時、経験のあるフランスアにその代役を担ってほしかったのですが、なかなかコンディションが上がらず、結果を残すことができませんでした。

 二軍には、中﨑(翔太)、今村(猛)、一岡(竜司)など、リーグ3連覇を支えたリリーフ投手がいて、二軍でも数多くの試合で投げていました。ただ、二軍の首脳陣からは、なかなか良い報告が上がってこなかったため、経験豊富な彼らを一軍で起用してみようと踏み切ることができませんでした。 

 来季に向けては、毎年課題になることですが、いかに無駄な四球を減らして、目の前の打者と勝負していけるかが大事になってくると思います。これは投手陣全体に言えることです。

 やはり二軍に長くいる投手は、打者との勝負というより、自分との勝負になっていると思うので、打者としっかり勝負できるように技術を磨き、不安要素を減らしてマウンドに立つことが求められます。そういった投手を1人でも多く増やすことができれば、自ずとチームの底上げにもつながってきます。

 ここ数年は、素晴らしい新人投手がカープに入り、新しい力が増えているだけに、なんとかそれを結果に結びつけていけるようにしないといけません。若い投手が今季の経験を糧にどんな進化をみせてくれるか楽しみです。

横山竜士 ●よこやまりゅうじ
1976年6月11日生、福井県出身。1994年ドラフト5位でカープに入団。1997年に10勝をあげると、以降は主にセットアッパーとして活躍。2013年には通算500試合登板を達成した。2014年に現役引退。野球解説者を経て、2020年から一軍投手コーチに就任。通算成績は46勝44敗110ホールド17セーブ。