12月15日、「NPB AWARDS 2021」が行われ、セ・リーグの最優秀新人賞(新人王)に栗林良吏が選ばれた。

 栗林はプロ1年目の今季、クローザーに抜擢されると開幕から大車輪の活躍。球団新記録となる開幕から22試合連続無失点、新人最多記録に並ぶ37セーブなど、数々の記録を樹立すると、東京五輪では侍ジャパンのクローザーにも抜擢され、悲願の金メダル獲得に大きく貢献した。今シーズン、救援に失敗したのはわずか1度。驚異のリリーフ成功率を誇るなど、わずか1年足らずで日本を代表する投手へと成長した。

 広島アスリートマガジンでは、ドラフト会議終了後から、4度にわたり、栗林を取材。ここでは、「編集部セレクション」として、カープの守護神に成長した栗林が、プロ1年目に話した言葉を振り返る。まずはドラフト直後の独占インタビュー(後編・前編はこちら中編はこちら)。栗林良吏がカープ指名直後に話した、働くことの大変さ、野球ができる喜び、そしてプロで戦う決意にフォーカスを当てる。(『広島アスリートマガジン』2021年1月号で行なったインタビューをもとにWEB用に編集)

栗林良吏は、春季キャンプ、オープン戦で結果を残し、2021年のクローザーに抜擢された。

◆マウンドでの負けん気の強さ、投げっぷりを見てほしい

─2年間の社会人生活で成長したと思うことを教えてください。

「一番は人間的に成長できたと思っています。大学まではお金を払って野球をやっていましたが、社会人ではお金をいただいて、社員として野球をやらせてもらっています。支えてくれる会社のために、社員の方々のために、地域のためにと思い、練習や試合に臨むことで、気持ちの在り方が変わっていきました。社会人野球を経験させてもらったことで、野球への取り組み方が一番変わりましたね」

─心技体でいくと、“心”が一番成長したということでしょうか?

「まさにそうですね。体のサイズはそこまで大きく変わっていません。技術面で変わったのは変化球です。大学ではスライダーが得意でしたが、社会人ではあえて投げるのをやめて、得意ではなかったカーブを習得したことで、直球とフォークがより生きてきました」

─コロナの影響で調整やモチベーション維持が難しかったのではないかと思います。先行き不透明だった時期は野球とどのように向き合っておられましたか?

「緊急事態宣言が出てからは、グラウンドは立ち入り禁止で、約1カ月の間、ずっと仕事をしていました。野球の視点で考えるとマイナスかもしれませんが、逆にこの期間があったことで、あらためて働くことの大変さを学び、同時に野球ができる喜びを知りました。今まで野球をやってこれたのは当たり前じゃなかったと感じましたし、もし野球を引退した時、トヨタ自動車という大企業で、僕が会社に貢献できるかと考えたら、業務の部分ではなかなか貢献できそうにないなと感じました。そういう面でも、野球に力を入れて、プロに入って会社のためにも、応援してくださる方々のためにも活躍したいと思うようになりました」

─プロ野球の世界でアピールしたいポイントを教えてください。

「社会人野球のなかでは投げっぷりは良いほうだと思うので、そういう負けん気の強さをマウンドで見せたいですね。トヨタ自動車では、負けたら終わりの試合で投げてきました。だからマウンドでは自然と気持ちが出ます。その投げっぷりの良さがアピールポイントになるか分かりませんが、そこが僕の持ち味なので、プロのマウンドでも自分を表現していきたいと思っています」

─力強い速球が注目されていますが、こだわりのある球種はありますか?

「直球が良くないとプロでは生き残れないと思うので、直球にはこだわっていきたいです。きっと引退するまで、直球は投手としての軸になると思うので、研究を重ね、進化させていきたいと思っています」

─先発とリリーフ、どちらの期待も大きいです。

「投手を始めた頃は、先発がやりたいという思いがありました。ただ、今はリリーフ投手の役割が重要視されてきて、良いリリーフがいるチームが結果を残しています。なので、先発でもリリーフでも、チームの勝利に貢献できるのであれば、与えられた場所で投げたいと思っています」

─2021年はプロとして最初のシーズンとなります。目標を聞かせてください。

「開幕から最後まで1年間、一軍メンバーでいることがプロ1年目の目標です。前半だけ活躍した、後半だけ存在感があったというのは即戦力選手としては期待に応えることができていないと思うので、1年間ケガなく、一軍で戦力として活躍したいですね」

─カープファンに方々に向けてメッセージをお願いします。

「広島は小学校の時に家族で旅行したとき以来となります。街のいたるところにカープが息づき、街全体・広島全体で、カープを応援していると聞いているので楽しみです。都市対抗では、豊田市を背負って戦っていたので、カープの一員となったからには、広島の想いを背負い、広島が盛り上がるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!」