12月15日、「NPB AWARDS 2021」が行われ、セ・リーグの最優秀新人賞(新人王)に栗林良吏が選ばれた。

 栗林はプロ1年目の今季、クローザーに抜擢されると開幕から大車輪の活躍。球団新記録となる開幕から22試合連続無失点、新人最多記録に並ぶ37セーブなど、数々の記録を樹立すると、東京五輪では侍ジャパンのクローザーにも抜擢され、悲願の金メダル獲得に大きく貢献した。今シーズン、救援に失敗したのはわずか1度。驚異のリリーフ成功率を誇るなど、わずか1年足らずで日本を代表する投手へと成長した。

 広島アスリートマガジンでは、ドラフト会議終了後から、4度にわたり、栗林を取材。ここでは、「編集部セレクション」として、カープの守護神に成長した栗林が、プロ1年目に話した言葉を振り返る。

 今回は東京五輪後に行なった4度目の独占インタビュー。新人ながら日本代表のクローザーを任され、全5試合に登板。2勝3セーブの成績を残し金メダル獲得に大きく貢献した。その活躍の裏側を栗林本人の言葉で振り返った。(『広島アスリートマガジン』2021年10月号で行なったインタビューをもとにWEB用に編集)

東京五輪でも活躍した栗林良吏。2勝3セーブの成績を残し金メダル獲得に貢献した。

◆最終回のマウンドに挑む姿勢は五輪でもカープでも変わらない

─広島アスリートマガジンでは4度目のインタビューとなります。今回は日本中が熱狂した東京五輪の話から伺っていきます。カープ同様に、日本代表でもクローザーを任されると全5試合に登板して2勝3セーブの成績を残され金メダル獲得に大きく貢献されました。五輪での登板を通して得たことや学んだことを教えてください。

「まず、DeNAの(山﨑)康晃さんから登板に向けての準備の仕方について、いろいろアドバイスをしていただきました。その中で康晃さんが言われていたのは『ベンチに入っている以上、どんな状況であっても、必ず出番があると思って準備をすること』が大切だということです。準備がきちんとできていれば、思わぬ形で登板が巡ってきたとしても自分の球を投げることができると思うので、そこはしっかり取り組もうと改めて思いましたね。もう一つ勉強になったのは、ウエイトトレーニングの捉え方です。これまで僕は、試合に影響が出ないようにウエイトのメニューをこなしていましたが、千賀(滉大)さんから、『ウエイトはその日のためではなくて、2年後、3年後のためのもの。将来のために今頑張っておいたほうがいいよ』と言われ、カープに帰ってきてからは、ウエイトにもこれまで以上に取り組むようになりました」

─日本代表合流前のインタビューでは「日本を代表する選手が集まるので話を聞くのが楽しみです」と言われていました。その他に選手とのやりとりで印象に残っているものはありますか?

「田中(将大)さんから『どれだけ小さくても、癖はすぐにバレてしまうから、できるだけ癖のない投球フォームにすることが大切』だと言われたことも印象に残っています。また、僕のフォームを見たとき『二塁にランナーがいる時は、セットポジションの位置を変えたほうがいいかもしれないね』とアドバイスをしてくださったので、改善したほうがいいと思う部分は反映していきたいと思います」

─日の丸のユニホームを身に纏ってのクローザーの仕事は、相当な重圧だったと思います。プレッシャーとはどう向き合っておられたのでしょうか?

「東京五輪は無観客での開催だったので、プロ野球のシーズンとは違った緊張感がありました。ただそこまでめちゃくちゃプレッシャーを感じるということはなかったです。シーズン中の試合より緊張した試合もあれば、逆に落ち着いて投げることができた試合もあります。あとは、例え自分が打たれたとしても、他に素晴らしい投手がそろっていると思えたのも大きいですね。1イニング全てを投げ切るというよりかは、1人でも多くの打者からアウトを奪うという気持ちでマウンドに上がっていました。その意識が、こみ上げてくるプレッシャーを少しは抑えてくれたのかなと思います」

─日本代表・建山義紀投手コーチの影響も大きかったのではないですか?

「建山コーチは選手にプレッシャーを与えないように、いろんな選手と話をしてチームを和ませてくれていました。いつも笑顔で話をしてくださっていたので、緊張も和らぎましたし、投手陣のチームワークもすごく良かったと思います。試合前には、起用方法などについて会話をしてくださり、投手が準備しやすい環境をつくってくださいました。また、僕は5試合全てに投げさせてもらったのですが、常に体の状態を考慮して話をしてくださりました。建山さんのおかげで、練習もやりやすかったですし、マウンドにも良い状態で上がることができました」

─持ち球であるフォークが世界でも十分に通用することを証明しました。

「フォークは低めに投げるというよりは、強く落とす意識で投げているので、結果的にストライクゾーンに落ちてもいいと思ってます。その意識は、五輪でもカープでも全く変わっていません」

─東京五輪ではシーズン中とは違う球を使いました。フォークの握りや投げ方に影響はなかったのでしょうか?

「合宿初日のキャッチボールの段階で、スライダーやカット系の球は、いつもより大きく曲がるなとは感じました。ただ、フォークに関しては違和感なく、普段通り投げることができました」

─マウンドに上がる時の気持ちは、カープでクローザーとして投げている時と比べて変化はありましたか?

「カープでも自分がしっかりと無失点で切り抜ければチームに勝ちがつく場面で投げさせてもらっていたので、日本代表でもカープの時と同じ気持ちで9回のマウンドに上がっていました」