2020年までカープに在籍し、2021年に現役引退を発表した外国人投手のクリス・ジョンソン。彼が日本で登板した128試合中、118試合でバッテリーを組んだのが、2020年限りで現役を引退した石原慶幸氏だ。

ジョンソンとの名バッテリーで数々の勝利に貢献した石原慶幸氏(写真は現役時代)

 ジョンソンが日本で挙げた57勝は全て石原氏とのコンビだった。ジョンソンが日本で活躍する上で欠かさせない存在だった石原氏に改めて聞いた思い出の後編をお送りする。

◆今は「お疲れ様」の一言に尽きる

 ジョンソンは試合だけを見ているとクールなイメージを持っているファンのみなさんも多いと思います。

 ですが、その逆でとても『人懐っこい』選手でした。みんなに声をかけながら、試合に入るとピリピリモードになって、繊細になって、細かいことも気になったり。それはどの投手も一緒ですが、捕手が構えているところに投げたなら「なんでストライクをとってくれないんだ?」ということもありますからね。

 ファンのみなさんもお分かりの通り、ストライク判定でカリカリしたり、雨が降っててイライラしたり……(苦笑)。『それら全てがジョンソン』という愛すべき存在だったと思います。

 個人的なことで言うと、2016年にジョンソンが沢村賞を受賞したときに「ありがとう」と刻印された時計をプレゼントしてくれたり、僕が引退した時に大きな一升瓶の日本酒をプレゼントしてくれたこともありました。感謝の気持ちを表す行動の数々も彼らしいですし、感謝の一言ですよね。

 2020年シーズンで僕は現役引退し、ジョンソンはカープを退団。偶然にも同じ年にカープを去ることになりました。僕の引退を知ったとき彼は「なんで辞めるんだ?」という感じで、お互いに無言のハグをしました。引退試合もそうでしたが、ジョンソンとは以心伝心というか、そういう信頼関係を築くことができたと思いますね。

 6年間、一緒に野球をプレーさせてもらいましたが、僕も一緒に勉強させてもらいながら、二人で成長していけた、本当にいいバッテリーだったなと。『女房役』という野球用語を借りるのであれば『いい夫婦』だったんでしょうね。

 彼がカープ退団後は、やっぱり動向が気になっていました。まだ現役を続けると思っていましたし、彼の実力を分かっているからこそ、続けてほしいと思っていました。引退を知ったときは、率直に寂しい気持ちでした。

 正直言えば、投げる姿を見たかったし、最後の年に僕がもうちょっと何かしてあげられることができていていたら……まだ野球ができていたかもしれないと思うこともあります。先ほども言いましたが最後に力になれなくて申し訳なかったな……という気持ちもあります。

 引退したジョンソンには「お疲れ様」ということに尽きます。

 今思うと本当にジョンソンとバッテリーを組めたことが、僕にとっていろんな糧にもなっています。ジョンソンの野球人生1ページの中に自分が入れたこともうれしく思うし、また僕の中にもジョンソンが入ってくれたというのも嬉しく思います。

 もちろん良いこともあったし、うまくいかないこともあったし、イライラすることも人間同士だからありました。それも含めて感謝していますし、出会えて良かった。ジョンソンの球を受けられて良かったです。

 彼は引退登板をしていません。いつかどこかで、日本でもアメリカでも、どんな状況でも、お互いにヨボヨボになってでもいいから、最後の一球を受けたいですよね。

 是非また会いたいし、ジョンソンのご家族に会えるのも楽しみにしています。