いよいよ明日、2022年ペナントレースの開幕を迎えるカープ。4年ぶりのリーグ優勝を目指すカープは、エース・大瀬良大地が、4年連続4回目の開幕のマウンドを担う。

 ここでは「カープのエース魂を考える」と題し、2020年に、カープOBの大野豊氏に聞いた“理想のエース像”を、前編・中編・後編の3回に分けて再収録する。

  “投手王国”と呼ばれた1980年代のカープにおいて、独特のフォームと七色の変化球を武器に活躍し、1988年には沢村賞にも輝いたカープOB・大野豊。全3回からなる本コラムでは、22年間の現役生活の中で先発から抑えまで、投手として全ての役割を経験し、数々の個性派エースの姿を間近で見てきた大野氏の語りを通じ、“エースの条件”を解き明かしていく。

 1回目となる今回は、大野氏が現役時代にしのぎを削ったエース級投手たちを振り返りながら、“エース”と呼ばれる投手に必要不可欠な要素を取り上げる。

◆時代が変わってもエースの役割は変わらない

長きにわたりカープの投手陣を支え続けてきた大野豊氏

 “エース”という言葉を聞いて、みなさんはどのような投手を連想するでしょうか。現役時代、そして引退後もさまざまな投手を見てきましたが、私が思うに真のエースとは“信頼を得ている投手”のことだと思っています。

 その信頼とはグラウンドに立つ選手たちはもちろん、首脳陣、そしてファンのみなさんから得るものであり、エースの称号とは一朝一夕で得られるものではありません。そして内容の良い投球をするだけではなく、エースには結果も求められてきます。そういう意味では私個人の見解としては、勝ち星を残して、負け数が少ないこともエース投手に求めたい条件の一つと言えるでしょう。

 私が現役だった頃と、今では先発投手の役割が変化してきています。投手の分業制が主流の今、こんなことを言ったら古い考えだと言われてしまうかもしれませんが、いつの時代であってもエースはリリーフに頼らずに試合の最後まで投げ抜く、そしてチームに勝ち星をつけるつもりでマウンドに上がってほしいところです。

 最後の回まで先発が投げるというのは、信頼がなければできないことですからね。もちろんすべての試合でそんな芸当は難しいかもしれませんが、せめて各球団のエース級の投手たちはそういう思いを持ってほしいと願っています。