4年ぶりの優勝を目指す上で、栄光と葛藤を知る男たちの経験は必要不可欠。カープには勝者のメンタリティを持つ経験者たちが数多くいる。今季、復活を懸け、鍛錬を重ねている選手の現在地に迫る。

今季、15年目のシーズンを迎える安部友裕

◆相手に勝つために何をすべきかを考えていく

 2年続けて開幕を二軍で迎えた安部友裕。2017年にはリーグ4位の打率.310を記録するなど、3連覇に主力として貢献した安部だが、今季は開幕から約2カ月を経過しても二軍で調整する日々が続いている。ただ、二軍では5月中旬時点で打率は4割を超えるなど、格の違いを見せつけている。

「意識しているのは廃れない技術を身につけること。もっともっと技術を習得して磨いていかないといけません」

 18歳でプロの世界に入った安部だが、気がつけば今年で33歳。チームの大半は自分より年下の選手となった。年齢を重ねれば、当然体も変わる。若い頃のような動きを求めることが難しいことは本人も理解している。

「体の変化にどうやって自分を合わせていけるかですね。打ち方もそう。今日はこの打ち方のほうがしっくりくるなといった風に、1日1日で感じる変化をより意識するようになりました。周りからのアドバイスもありますが、そこの正解は自分にしか分からないですし、責任を取るのも自分なので、しっかり考えながら練習に取り組んでいます」

 結果を求めて、昨年から技術的なこと、考え方など大きく変えた部分もあるという。しかし、3連覇を経験したからこそ、自身の結果以上に、チームの勝利が大切なことも背番号6は熟知している。

「毎年、若い選手が入ってきますが、僕のなかでは負けているとは思っていません。ただ、大切なのはチーム。選手間の競争も大事ですが、チームとして戦っていく以上、適材適所があります。求められるところで自分をフィットさせることが大切だと思っています」

 2位に圧倒的な差を付けてリーグ優勝を果たした2016年からの3年間。あの頃のチームは、ベテランと中堅、若手がうまく融合し、チーム一体となってペナントレースを戦っていた。歓喜の瞬間を知っているからこそ、4年ぶりの優勝を目指すチームに安部の存在は必要だ。

「とにかく相手に勝つために何をすべきかを考えていくことが大事だと思っています。一軍には長野(久義)さんも松山(竜平)さんもいます。そこに僕たちの年代がどう貢献していけるか、チーム全体を見てプレーしていくようにしたいです」

 安部の代名詞とも言える『覇気』の裏にあるクレバーな思い。栄光も葛藤も知っているからこそ、見ている視野は広い。いつか必ず来る、一軍からの昇格オファーに向けて、安部はチームの勝利のために二軍で刃を研ぎ続ける。