試練の交流戦は終盤を迎えた。カープは「逆襲」の思いを胸に、遠征の6連戦に挑む。下位指名からチャンスをつかんだ男。猛練習で技術を培った男。そんな彼らがチーム一丸となって、連敗ストップに挑む。

共に社会人野球・トヨタ自動車を経て、カープに入団した、2年目の栗林良吏投手(左)とルーキーの中村健人選手(右)。

 カープの歴史を支える「スカウティング」について、3月30日に発売された新刊『眼力 カープスカウト 時代を貫く惚れる力』(サンフィールド)の著者である坂上俊次氏(中国放送)が、“流しのブルペンキャッチャー”としてドラフト候補選手の球を受けながら取材するスポーツジャーナリスト安倍昌彦氏とカープドラフト、スカウトについて対談を展開した。

 連載最終回は、“原石を見つけるタイミング”についての話題で盛り上がった。

◆相手チームに光る原石がいることも多い

坂上「次のドラフトなんですが、カープの補強ポイントやドラフトのマーケットはどのような状況ですか?」

安倍「実は、社会人野球の東京大会という今年最初のアマチュア野球の全国大会があるんですけど、そこで、コイツだ!というのを見つけたんですよ」

坂上「どのような選手なのですか?」

安倍「カープの今年のオープン戦も見ていまして、何がポイントかな?と思ったときに、僕はサードのポジションだと思うんです。サードにドンっと1人決まればもっとカープ全体のチームが落ち着いてくると思うんです」

坂上「今シーズンは本職が捕手の坂倉将吾選手がサードを守ったりしていますね」

安倍「『日本新薬』という社会人野球チームが京都にあるのですが、福永裕基選手という三塁手がいるんです。先日の東京大会でも1試合でホームラン2本を含む長打を打っていたんです。打つだけの選手と思ったら、フィールディングの連動性も素晴らしい選手でした。彼を見てすごく良いなと思うのは、チェンジになって、ダグアウトに帰ってくる時の姿です。自分の打順じゃなくても『よし!』と、やるぞ!という感じで帰ってくるんです。非常に前向きで若々しい、スピリットを持った福永選手が、今年大卒4年目になったんです。僕は去年か一昨年のドラフトでどこかが指名すると思ったんですが指名漏れしていますが、この選手は26歳になりますが野球は若いです」

坂上「なるほど。野球が若い・・・」

安倍「彼は22、23歳の野球をやりますよ。そういう意味では、この福永選手は今すぐにでもカープに連れてきたらサードのレギュラーで行けるのではないかと思うくらいの選手ですね」

坂上「安倍さん、ドラフトに向けて早くも盛り上がっていますね」

安倍「この選手は面白いですよ。専修大の時から打球スピードが半端ないです」

坂上「そういえば先日、安倍さんのおすすめ選手であるJFE西日本の根岸涼選手を見に行ってきました」

安倍「強い球を投げる投手ですよね。高校、大学では実戦経験が多いわけではないようですが、素質が開花しつつあると見ています。あとは実戦でどれくらい自分のスキルを、痛い目にあいながら上げていけるかというところかと思います」

坂上「安倍さんの域には達しませんが、JFE西日本に取材に行った際、オープン戦の対戦相手が京都先端科学大でした。よく声を出すし、投手のレベルが高いなと感じました。野球の見方と言いますか、私もいつの間にかスカウトのような目線で相手チームを見ていました(笑)」

安倍「監督は元日本ハムの中島輝士さんですよね。あの方もスカウトを長くやっておられましたし、良い指導をされているんでしょうね。甲子園の帰りにリーグ戦を見に行きたいですね」

坂上「面白いと思います。右のオーバーハンドの投手もみんな腕をしっかり振って帽子を飛ばして。フル回転という感じで見ていて気持ちよかったです」

安倍「可能性のある選手を見ることは楽しいですよね。そういうところが、この年になっても、この仕事がやめられない理由です。お目当ての選手がいて試合を見に行くのですが、相手チームに光る原石の選手がいたというのも結構あると思います。そういう出会いが本当に楽しみなんです」

坂上「カープで言うと天理大から石原貴規選手が入った後、森浦大輔投手が入る。トヨタ自動車から栗林良吏投手が入った後、中村健人選手が入る。これは偶然ではなく、誰かを見た時にその人の視線にも入っていて、次の選手を長いスパンで見ているからよく見れていて、確信を持って指名できるということなのかなと。同じ出身団体から指名していることは偶然じゃないような気がします」

安倍「それは確かにありますね。おそらく森浦投手は、本当に華奢で中学生みたいな体格で大学に入ってきたピッチャーなので。恐らく鞘師スカウトが石原選手を見に行った時に、『これは誰だろう?』と思ったかもしれません。小さくて細いんですが、その体でこの球を放るのかという動き。そういうところから見始めた森浦投手じゃないかと思います」

坂上「鞘師スカウトもそういうことをおっしゃっていました」

安倍「昨日、今日の出会いじゃないですもんね」

坂上「話題は尽きませんが・・また対談させていただきたいです」

安倍「是非。その時までに良い選手を見つけておきます(笑)」

対談を行った安倍昌彦氏(写真右)と坂上俊次氏(写真左)