甲子園を目指し、仲間と白球を追いかけた高校時代。そこで培った経験は、球児たちのその後の人生にも大きく影響を与えた。

 プロに進んだ選手、社会人野球の道を選んだ選手……。ここでは、それぞれの道に進んだ元・球児たちが、高校3年間を振り返る。

 新井貴浩氏が振り返る高校野球【後編】となる今回は、新井氏がコロナ禍での甲子園への思いを中心に語った。現役球児に贈られたレジェンドからのメッセージとは?

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サッカー部、ラグビー部も全国大会出場経験を持ち、スポーツが盛んな高校としても知られる広島工業。

◆確実に高校野球のレベルは、自分の時代よりも上がっている。

 ここ数年の高校野球を見ていると、僕がプレーしていた時代よりもはるかにレベルが高いと感じます。

 今はネット社会でいろいろな情報をすぐに得ることができます。トレーニング方法も多様化していますし、プロテインなどを摂取するタイミング、食べるものや食べ方なども僕らの時代とまったく違いますよね。その証拠にまず体格が違いますし、投手が投げる球速がまったく違います。

 僕らの時代は140キロを投げる選手が数えるほどでしたが、今は全国的に見ても150キロを超える投手が増えてきています。そこが一番レベルの違いを感じるところですね。投手のレベルが上がっていくと、それに負けまいと野手のレベルも上がってきて、総合的にレベルが上がってきますからね。

 広島県もそうですが、全国的に高校野球の人口が減ってきているそうですね。

 僕らの時代と違ってスポーツも選択肢が増えてきていますし、テニスやサッカー、バスケ、ゴルフにしても海外で活躍する日本人が増えています。そういう選手に憧れる子どもも多いでしょうね。あとは少子化の影響もあると思いますし、野球の競技人口が減ってくるのは仕方ない部分があるのかなと思います。

 とはいえ、高校野球が盛り上がってほしいという気持ちは常にあります。 現在世の中はコロナ禍ですが、高校野球界も大きく影響を受けましたよね。特に2020年の高校球児のことを思うと心が痛いです。やはり甲子園を目標に3年間頑張っている中で、特に3年生はそうですよね。

 高校野球は野球をやったことがない人でもファンは多いですよね。やはり見るものを感動させる要素があるからでしょうね。

 3年間という限られた期間の中で一生懸命プレーをして、汗水涙を流し球児が頑張る姿は、輝いて見えます。そういうプレー、気持ち的なものが見る人に伝わりますし、感情移入できますからね。

 最後に高校野球を頑張っている球児のみなさんに対して伝えたいことがあります。

 野球ができるのは親御さんのみなさんがいるからなんです。“常に大好きな野球をやらせてもらってありがとうございます!”という感謝の気持ちを持って、1日1日を大切にしてほしいです。

新井貴浩(あらい・たかひろ)◎1977年1月30日生、広島県出身
1992年に広島工業に入学。
2年秋から主将となり、3年夏の広島大会はベスト16。高校卒業後は駒澤大でプレーし、1998年ドラフト6位でカープに入団。2005年に本塁打王に輝くと、不動の4番として活躍。2007年オフに阪神に移籍し、2015年にカープに復帰。2016年には2000安打を達成し、25年ぶりの優勝に貢献。MVPにも輝いた。翌年からも勝負強い打撃で3連覇に貢献し、2018年限りで現役引退。現在はプロ野球解説者として活躍中。