◆10連敗したチームが夏場にかけて復調

 僕たち首脳陣は試合中、すべての事態をシミュレートしている。たとえば(ブラッド)エルドレッドに代走を送ったとき、もし同点に追いつかれたら堂林をファーストに入れておいて、最後の代打として松山(竜平)をとっておこう……など。そんな刻々と変わる戦況の中では、堂林がサードからライト、そしてファーストとこなせることで一気に戦術の幅が広がるのだ。

 ユーティリティー性が重宝される時代は、もうすでに到来している。それはカープだけではなく、他球団も同じ。これからの選手は、生き残るためにユーティリティープレーヤーという道も視野に入れながら自分の方向性を模索していくことになるだろう。

 再びシーズンに話を戻そう。交流戦の10連敗で一度はドン底をさまよったチームだが、7月8月と勝ち越して復調。セ・リーグの混戦にも便乗して、8月末には5位ながら首位に3.5ゲーム差という位置にまで浮上してきた。

 やはりチームが崩れなかったのは、投手陣の力によるところが大きい。マエケン(前田健太)、バリントンという柱になるピッチャーがローテーションを守ってくれた。彼らが投げるときは「今日は勝てる」「勝たなきゃいけない」というムードが充満した。この年、マエケンが防御率2.46で216イニング投球、バリントンが防御率2.42で204と1/3イニング投球。本当に素晴らしい内容だ。

 これに加えてルーキーの福井が8勝、(今村)猛もセットアッパーとして定着し、サファテがストッパーとして絶好調―統一球とともにこの年は3時間半ルールが適用されたが、僕は投手陣の好調はそのおかげだとは思わない。単純に底上げがなされたのだと思っている。

 それにしても夏場の復調は心強かった。交流戦の10連敗で気落ちして、そのままズルズルいってしまってもおかしくないところを、チームは踏ん張って盛り返した。そのことは2011年以降の戦いにおいても大きな希望になるものだった。