野球のSTPマーケティングとは

マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーは、その設計枠組みとしてSTPマーケティングを提唱した。これは『セグメンテーション(S)』『ターゲティング(T)』『ポジショニング(P)』の3つのプロセスによって、顧客価値を高めていく手法だ。

プロ野球選手をこのSTPで考えるならば、まずは試合場面を『セグメント(細分化)』して、どのケースで勝負するのかを『ターゲッティング』する。そして、その場面での持ち味をとことん磨いていくことになる。これが『ポジショニング』だ。

 

三村氏は言う。

「プロ選手である以上、一番にならなくてはならない」。

ただし、それは決して同じ土俵での話ではない。自らが一番となれる場所を見つければいいのだ。幸い、野球は攻守、イニング、点差、アウト・ボールカウント、走者の有無とシチュエーションは多様にある。工夫次第で自分の能力を生かせる場所はいくらでもあるのだ。

ポジショニングは競争相手との相対的な関係でとらえられるため、位置関係は変動していく。仮に、その場面で一番手になれないのであれば、ターゲットとすべきセグメントを増やしたり、減らしたりして『場』を変えればいい。

マーケティングは製品志向の1.0から消費者志向の2.0、そして価値志向の3.0へと進化した。コトラーは価値志向の持ち主として、人を中心としたホリスティック(全体論的)マーケティングを主張した。これは組織(チーム)の統合をテーマに、動機づけ、貢献心、関係性、相乗効果を重視したものだ。人を生かすその根幹は三村氏が提唱した『トータル・ベースボール』のそれと同じといえるのではないだろうか。