今シーズン、カープのショートは高卒4年目の22歳・小園海斗がレギュラー確保に向けて奮闘を見せている。

 広島の二遊間は、これまでにさまざまな選手が守り、数々の名選手を生み出し続けてきたポジション。ここでは、かつてカープのショートを守ってきた遊撃手たちに聞いた“二遊間論”を改めて振り返っていく。

1974〜1987年までカープに在籍し、三村敏之、髙橋慶彦らと二遊間を組んで活躍した木下富雄氏。

◆意識したのは『阿吽の呼吸』よりも、確実にアウトを取ること

 現役時代、私は主にセカンドを守っていましたが、一番意識していたのは『阿吽の呼吸』というよりも、投手が打ち取って『アウトになる』と思った打球を確実に処理すること、『まずはアウトを取ること』でした。コンビを組むショートの選手が誰かということは関係なく、アウトを取るために最善の策を自分なりに考えていました。

 私は先輩である三村敏之さん、後輩では髙橋慶彦と主に二遊間を組んできましたが、いずれも年齢差はあまり気になりませんでした。人によってやりやすさが変わるのではなく、やはりプロ野球ですから打球に合わせてプレーをこなすということが自然の流れです。三村さんは人間的にも良い人で、コンビを組ませていただいたときは、緊張することもなく、楽にプレーさせていただいた印象ですね。

 慶彦の場合は私に懐いていてくれたこともあり、普段からのコミュニケーションはよく取れていました。ただ、試合中はお互いの感覚が大事になる面があるので、年上の私が特別に指示を出すといったことはありませんでした。『どこに送球がきてもベースタッチして、一塁に投げる』という気持ちが大事です。そう思う気持ちはお互い様であって、いわばフォローし合うということになります。

 そして、どのポジションにも言えることかもしれませんが、二遊間を守る上では経験を重ねることも大切な要素となります。たとえば『この相手打者はこういう打球を打つタイプ』ということを理解した上で打球方向を予測した守りをする。こういうことです。加えて、打球に対しての動きに関しては、その選手が持っている感性が出てくるものです。若い頃から経験を重ねることができているならば、ベテランとなり筋力の衰えなどが出てきてもこの経験と感性が生きてくるわけです。

 最後に二遊間を守る選手に求めたいことを言うならば、単純に言えば『動物になりきること』でしょうね。犬にたとえるならば、『ボールを投げればすぐに飛びつく』というような反射的な動きです。私も50歳後半の頃に当時マスターズリーグに出場したときも、「打球が飛んできたらすぐに飛びつくよね」と周囲の人に言われたものです(笑)。それほど二遊間というのは、打球に対しての反応と研ぎ澄まされた感性が要求されるポジションだと思います。

《プロフィール》
木下富雄●きのした とみお
1951年5月7日生、埼玉県出身
73年ドラフト1位で広島入団。当初はショートを守っていたが、初優勝以降は主に二塁手として存在感を発揮した、カープ黄金時代の名ユーティリティープレーヤー。若手時代は先輩である三村敏之とコンビを組み、中堅となってからは髙橋慶彦との二遊間コンビとして活躍し、数多くの優勝に貢献した。