8月、10勝15敗と負け越してしまったカープ。CS争いで遅れをとってしまったが、チーム事情を考えると、よく踏みとどまったとも言えるだろう。

 激震が走ったのは、8月16日。佐々岡真司監督と選手7人が新型コロナウイルスに感染。特に野手では菊池涼介、小園海斗、上本崇司、野間峻祥の4人が登録抹消され、大幅な選手入れ替えを余儀なくされた。

 チームのピンチを救うべく、昇格したのはカープの未来を担う若手たち。彼らの奮闘を今一度振り返ってみたい。

一軍昇格以降、攻守にわたり存在感をみせている矢野雅哉

◎自慢の強肩とパンチ力を見せた矢野雅哉

 小園の代役としてショートに抜擢されたのはプロ2年目の23歳・矢野雅哉。入団早々、昭和の野球選手を彷彿とさせるパンチパーマで現れて話題になった男だ。

 亜細亜大時代から強肩と高い守備能力が評価されていた守備職人候補生。その評判通り、本職のショートを守ると深い当たりでも強肩爆発の好守備を連発した。

 その一方で打撃が課題と言われてきたが、8月16日に緊急昇格した第1打席でライトに値千金の2ランホームラン。プロ初ホームランで、実は人生で2本目と明かしていたが、それを全く感じさせない打球角度だった。

 8月27日の巨人戦でもライトにホームランを放ち、打撃の進化を印象付けた。矢野が内野ユーティリティ、さらには小園とショートのポジションを争うようになれば、チームにとっては「災い転じて福となす」のではないだろうか。

◎本職のセカンドで魅せた羽月隆太郎

 混戦になったセカンドで代役の座をつかんだのは、プロ4年目の22歳・羽月隆太郎だった。167センチ69キロの小柄なスピードスター。個性的なオカッパ頭が人気を博す選手だ。

 昨季から出場機会を増やすために外野に挑戦しているが、やはり本職であり適正ポジションのセカンドでは俊敏。今季はサードで2個、外野で1個のエラーを喫していたが、セカンドでは菊池不在の期間をノーエラーで凌いだ。

 打撃はまだ成長途上だが、今季は二軍で16盗塁4盗塁死と盗塁の精度も増している。盗塁が減りつつあるチームで存在感を増していきそうな選手だ。

◎球際の強さを見せた韮澤雄也

 プロ3年目の21歳・韮澤雄也も2試合でセカンドのスタメンに抜擢された。花咲徳栄時代は打撃の評価が高い一方で、守備は正直飛び抜けていた印象はなかった。

 ただ、プロに入ってからの印象はまったく違う。飛び抜けて足が速いというわけではなく、俊敏またはパワフルとは言い難かったが、今回の一軍出場ではフットワークが向上し、球際に強い好守備を連発した。

 高校時代から目立っていなかったが堅実だったことは確か。プロで鍛錬を重ね、堅実さがさらにスケールアップした印象だ。エラーを1個記録してしまったが、ダイビングキャッチ後の悪送球でプラマイゼロ。その後、代打でプロ初安打も記録し、改めて楽しみな素材だと実感させた。

◎育成の星を目指す大盛穂

 8月23日に秋山翔吾が発熱(結果は陰性)で欠場・待機を余儀なくされたカープ。野間に続いて2枚目の外野を失ったが、そこで抜擢されたのは2018年の育成ドラ1・大盛穂だった。

 8月24日のヤクルト戦でスタメンを任されると、レフトポール際に流してホームラン。26日の巨人戦でトップバッターに座ると3安打猛打賞、翌27日にはマルチ安打と爆発した。

 厚い外野層でなかなか出番に恵まれなかったが、打力も走力も十分。今季は1番・野間がハマっているが、来期以降、トップバッターの座を争うことに期待したい。