10月24日に発表された、新たなるカープの来季コーチ陣。カープ一筋19年の石原慶幸や、藤井彰人、新井良太、福地寿樹とこれまでカープ以外でも活躍したメンバーの人選があった。ここではOBの笘篠賢治氏に、来季注目のコーチについて語ってもらった。

10月28日にマツダスタジアムでコーチ就任会見を行なった福地寿樹氏

◆他球団での経験を存分に活かしてほしい

 日本シリーズは第7戦までもつれ込む熾烈な戦いとなりました。やはり打線は水物で、短期決戦というのは、長丁場のシーズンとは違った怖さがありますね。

 勝つか負けるかは本当に紙一重です。カープの首脳陣や選手たちは試合を見ながらどのようなことを感じたか、自分たちに当てはめ、チームづくりや戦術など、さまざまなところで参考になることがあったと思います。

 さて、先日、カープに新たに加わったコーチ陣の発表がありました。その中で私が注目するコーチは、福地寿樹二軍打撃兼走塁コーチです。入団会見で「カープのチームカラーや伝統をもう一度」といったコメントを発していましたが、ヤクルト時代に2年連続盗塁王を獲得した技術、そして2021年までヤクルトで一軍外野守備走塁コーチなどを務めていた経験を存分にカープで活かしてもらいたいですね。

 福地コーチは、昔で言う永田利則さんのような役割を任されることになるのでしょう。チーム盗塁数が今季は一軍、二軍ともにリーグワーストだったということもあり、その数字を増やしていくことが大きく期待されているはずです。

 単純ではありますが、まずは“スタートを切るための勇気を持たせること”、そして“走るタイミングなど、盗塁の技術を教えて実践させること”が重要になるでしょう。ただここで大事なのは、常にグリーンライトで走らせていてもアウトが増えて試合で負けていたら意味がありません。

 勝ちにいく野球の中でどれだけ足を使えるか、しっかりとテーマを持って臨めるかどうかが重要になります。二軍は「アウトになっても良いから走りなさい」といったスタンスでも良いのですが、やはり一軍は勝つための野球をする中での戦術として走らせなければなりません。私が現役だった頃、永田さんがそれを教えてくれました。

 これからは若い選手を伸ばし、次の世代をつくっていかなければなりません。「ヨーイドンで走って、スピードがある選手はたくさんいるはずなので、何が原因で走れていないのかそこの追求をしたい」と福地コーチが言っていました。これから取り掛かる作業は大変だと思いますが、一軍に上がったときに新井貴浩監督が使いたくなるような選手を育ててもらいましょう。

 そして、打撃コーチとしては、福地コーチ自身が主軸以外での出場機会が多い打者でしたので、1番、2番、もしくは下位打線の中で光る選手を育てることが期待されていると私は思います。強く振って遠くに飛ばすという選手が注目されがちですが、ヤクルトでは山田哲人や村上宗隆みたいなタイプだけでなく、山崎晃大朗や丸山和郁のようなタイプの打者も大切な役割を果たしています。そういったところも期待して11月8日から始まる、秋季キャンプを見守りたいと思います。