◆シーズン後半に盗塁が減った理由

 ただしこの年は、シーズン前半に比べて後半に盗塁が減ったことを疑問に感じているファンの方も多いかもしれない。実際シーズン序盤はランナーが自由に盗塁を仕掛けて良かったが、後半は盗塁の際はサインを出すことにした。

 それはある意味、当然のことである。シーズン終盤になると「これは絶対に落とせない」という競った試合が多くなる。となると盗塁を試みるにしても、状況を考えなくてはいけなくなる。

 特に丸は序盤、闇雲に走り過ぎるところがあった。たとえば四番がバッターのときに丸が走って盗塁失敗アウトとなると、試合の流れが一気に相手に傾いてしまう可能性もある。ならば「ここは走るフリをして配球を絞らせてバッターに勝負してもらおう」と判断をすることも必要になってくる。

 それは僕にとっては「走塁への意識が上がった」ということであり、単純に盗塁数が減ったことを指摘するのは違うと思う。チームがギリギリで順位を争っている中では、常に走塁という行為が持つリスクも考慮しなければいけないのだ。

 この年、苦手の交流戦は11勝13敗と、勝ち越せなかったものの大きく負け越すことはなかった。一時は6連敗を喫して最下位に転落したが、その後5連勝、さらに4連敗と相変わらず浮き沈みの激しい戦いが続く。

 そんな中、シーズンのターニングポイントとなったのは、間違いなくキラ(カアイフエ)の登場である。この年3位になれたのはキラの力が大きかったし、彼はチームが浮上するための起爆剤になってくれた。

 なんといっても登場が鮮烈だった。7月9日のDeNA戦、一軍に昇格したばかりの試合で来日初ホームランを放つと、そこから3試合連続でホームランを放つなど4本塁打、10打点の大活躍。彼が最高のスタートを切ったおかげで、チームが一気に明るくなった。