意図的に『流れ』をつくりだす

2020年6月19日、約3か月遅れてプロ野球は開幕した。ただし、当面の間、試合は無観客で行われる予定だ。暑さが厳しい時期に行われる6連戦を考えれば、例年以上に主力選手の調子の見極めが重要になるのではないだろうか。

不確定な要素が渦巻く野球においても、意図的に変えられる流れがある。それは打者の打順と投手の継投順だ。その組み合わせ次第で巡りは変わり、流れは大きく変化するだろう。攻めの流れと守りの流れには“循環”と“単方向”という方向の違いがあることも忘れてはならない。

攻守におけるチームのダイナミズムは水車の動きに当てはめると分かりやすいだろう。単方向の水流によって水車を回し、水車における循環の力で水流を生み出す。野球における攻めと守りは、こうした水車のメカニズムのような相補的な関係にあるといえる。さらに付け加えるのであれば、ファンの応援は、カープという水車に勢いを与える風のような存在なのかもしれない。

「マツダスタジアムは一番戦いにくい球場」

高橋由伸・前巨人監督がいうように、逆境に立たされても、あきらめないファンの応援は、何かが起きそうな雰囲気を創り出してくれる。

カープ最大の強みとも言える応援の強みは、『リモートマッチ』では期待できないかもしれない。しかし、これまでファンとともにつくった逆転の経験値は、カープの懐刀といえるだろう。

今季のカープは選手のみでのスタートになるが、真っ赤な炎を絶やすことなく、今度はカープファンを、日本全体を元気づける試合を魅せてもらいたい。

土俵際、もはや絶体絶命……ならば

「さ、ひっくり返そう」。

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高柿 健(たかがき けん)
広島県出身の高校野球研究者。城西大経営学部准教授(経営学博士)。星槎大教員免許科目「野球」講師。東京大医学部「鉄門」野球部戦略アドバイザー。中小企業診断士、キャリアコンサルタント。広島商高在籍時に甲子園優勝を経験(1988年)、3年時は主将。高校野球の指導者を20年務めた。広島県立総合技術高コーチでセンバツ大会出場(2011年)。三村敏之監督と「コーチ学」について研究した。広島商と広陵の100年にわたるライバル関係を比較論述した黒澤賞論文(日本経営管理協会)で「協会賞」を受賞(2013年)。雑誌「ベースボールクリニック」ベースボールマガジン社で『勝者のインテリジェンス-ジャイアントキリングを可能にする野球の論理学―』を連載中。