流れを渡さない想定力

野球は互いのチームの『意図』がぶつかり合い、打ち消し合う相対的な競技といえる。試合展開において自分たちの意図通りに進むことはほとんどないといっていいだろう。こうした野球の特性を考えるならば、意図せざるマイナスの結果をどう想定しておくかによって、“流れ”は大きく変わることになる。

チャンスの場面において新井貴浩が打つダブルプレーと田中広輔が打つダブルプレーではチームに与えるダメージは違う。フルスイングの強打と俊足巧打の選手では結果に対する想定はあきらかに異なるのだ。

想定された「最悪のケース」をさらに下回れば、心理的ダメージは大きくなるだろう。そこで、いかに想定範囲を広げ、オプションを用意しておけるかが試合展開に大きく影響を与える。流れを渡さないためにはリスクマネジメントが必要なのだ。

リスクマネジメントには事前の予防(想定)と事後の対処がある。『逆転のカープ』を成し得た一番の要因は、想定外の結果を受け入れ、再び立ち上がり、ファイティングポーズを崩さなかったことではないだろうか。

七転び八起き、冒頭に紹介した炎鵬のメッセージのようにどんなことがあっても立ち上がり、前を向くことができれば、再び流れを引き寄せる可能性が生まれるのだ。