2022年シーズンで現役引退を決断した、カープ一筋14年の中田廉。"兄のような存在"と信頼を寄せる前田健太の魅力について、改めて中田ならではの視点で熱く語ってもらった。

(前編はこちら)

現役時代は267試合に登板。ピンチの場面での登板も多く、『火消し』として活躍した。

◆気持ちはもはや“ファンの1人”。メジャー挑戦後もずっと気になっていた

 マエケンさんは野球人としての凄さももちろんですが、一番尊敬しているのは、誰に対しても同じ態度で接するところです。メジャーに行っても偉そうにすることもなく、後輩にも気が遣えて、ファンの人も大事にしていて、本当に人間として100点ですよね。僕はそんなマエケンさんが大好きです。

 カープ時代に印象に残っているのは、いつの試合か忘れてしまったのですけど、東京ドームでの巨人戦で、その日マエケンさんは40度近い熱を出していて、真っ青な顔をして試合前に点滴を打っていました。当時、僕はロングリリーフをやっていたので、試合前に「廉、なんかあったら頼むな」って言われていたんです。さすがにやばいと思っていたんですが、蓋を開けてみると6回途中くらいまでなんと完全試合だったのです。結果的に僕の出番もなく、やっぱりこの人はすごい人だなと思いました。

 スーパーアスリートのマエケンさんですが、可愛い一面もあります。マウンドではどしっと構えているのですが、車で移動中に道が混んでいたりすると、ちょっと機嫌が悪くなるんですよね。僕はマイペースなので、気にせずいるんですが、マエケンさんはわりとせっかちで(笑)。そういうところを見ていると、人間味があってほっこりするなと感じます。

 メジャーに行ってからは、日本とアメリカで離れ離れになってしまいましたが、マエケンさんが登板する日はテレビやアプリの速報で必ずチェックしています。「今日はどんな投球をするんだろう……」って、もはやファンの一人でした。

 でも、当時周りが“メジャー挑戦”について騒いでいたときは、あんまりそういった話題に触れないようにしていました。僕が介入するのも良くないなと思っていたので、行くことが決まるまで「メジャーに行くんですか?」とか「どこの球団ですか?」といった話は全くしたことがありませんでした。ポスティングの申請を出したときに初めてLINEで「楽しみにしています」と送ったのを覚えています。

 そこからは頻繁に連絡を取っています。僕の調子が悪いときは、相談したらマエケンさんから握りの写真が送られてきたり。「最近よく打たれてますね」みたいなこともこちらから送ったりもしました。そうしたら「廉、教えてくれよ」と返信があり、「メジャーリーガーに教えられることはありません」というようなやりとりもありました(笑)

 後編へ続く

広島アスリートマガジン2月号は、本誌初登場!秋山翔吾 2023年の覚悟』。さまざまな角度から秋山選手の“覚悟”に迫りました。2015年以来の登場となる、前田健太選手インタビューにもご注目ください!