◆自分がやってきた事に見切りをつける

 2006年にマーティ・ブラウンが監督に就任しましたが、私も含めて多くの選手たちにとって、初の外国人監督という経験でした。選手とのコミュニケーションを重要視する監督で、特にやりづらさは感じませんでしたが、練習時間の短さには驚かされました。

 監督が変わるという事は、当時の私のような選手にとって、自分についている悪いイメージを大きく変えるチャンスです。気合いを入れて05年の秋季キャンプに臨んだのですが、練習試合、紅白戦などで全くヒットが打てませんでした。

 それをきっかけに、これまで自分がやってきた事に見切りをつける時期が来たと考えました。自分が野球を始めた小学生の時から積み重ねてきたものを捨てるという事には勇気が必要でしたが、〝このままだと自分の野球人生は終わってしまう〟という危機感が新しい方向へ進む決断の原動力となりました。

 オフに個人トレーナーに指導をお願いして体の使い方、打つ際のポイントの位置など、さまざまなことを学びました。そのほとんどの事が、自分にとって初めての感覚で、新しい発見が次から次へと出てきました。

 そして今でも鮮明に覚えているのですが、沖縄春季キャンプの紅白戦で、チームメートの横山竜士さんから長打を放つ事が出来たのです。その一打で自分が新しく取り組んできた事に自信が持てるようになってきました。

 またオープン戦では当時球界のエースだった斉藤和巳さん(元ソフトバンク)から、3ランを打つ事もできました。今振り返ると、この2006年という年はその後のプロ野球人生に大きく影響を与える年でした。

 ちなみにこの年、私は一塁手としても試合に出場しています。栗原健太の故障により、私に一塁手としての打診があったのです。"試合に出る事ができればどこでも良い"という思いがあった私に、その打診を断る選択肢はありませんでした。

 当時は東出輝裕が二塁手として活躍していた時期。彼とコミュニケーションを取りながらなんとか頑張っていました。

 もちろん戸惑いを感じた部分もありましたが、東出から「純さんはファーストゴロを止めれば良いだけです。無理に他の打球を取りに行かなくてもいいんですよ」と声をかけてもらったおかげで精神的に楽な気持ちで試合に臨むことができました。