気迫を込めた試合を決める最後の一球。マウンドに駆け寄る仲間たちと共に、歓喜の渦に巻き込まれたあの3シーズン。カープの守護神として、3年連続の胴上げ投手となった中﨑翔太はフル回転で戦い抜いた。今、若い選手が躍動するあのマウンドに再び立つことを誓い、チームにできること、経験者として伝えなければいけないことを語ってくれた。そこには悲壮感など全く感じさせない、前を向き続ける男の姿があった。

モチベーションを高く保ち、向上心を持ちながら。

2023年3月、オープン戦でのマウンドに立った中﨑

−現役時代、共にプレーされていた新井貴浩監督となり、心境の変化などありましたか?

「僕が何か変わったとかはありませんし、新井監督が選手から監督になってからも、大きく変わったところは感じませんね。練習中や登板後に、声をかけてもらったりすることは多いです。僕だけではなく、新井監督は目に入った選手全員、その時その時でみんなに声をかけていますね。選手時代でも、そうやって僕にも声をかけてくれたりしていましたし、他の選手からも、監督から声をかけてもらえると聞いたりもしていました」

─コミュニケーションを大切にされる新井監督になって、チームに何か変化はありましたか?

「やりにくいと感じることはありません。選手・監督・コーチ含めて、お互いの会話が増えてきているなというのは感じますね。これまでの体制が、コミュニケーションが全くなかったというわけではなく、より会話がしやすい環境になったなという印象です」

─監督には、話しかけづらいとか恐れ多いとか、そういう印象があるのかなと思っていました。

「選手から話しかけることは多くはないですが、逆に監督から話しかけてくれるので、選手にとってはとてもコミュニケーションが取りやすいですね」

─新井監督と会話の中で、印象に残っている言葉やフレーズはありますか?

「新聞記事にも出ていると思うんですが、ミーティングなどで新井監督が話されている言葉ですね。チーム一丸だとか、家族だとか、そういう話をみんなの前で熱く話してくれます。僕はいま二軍にいますけど、『チームのために何かできることを』と思えるのは、新井監督の気持ちに応えたいという思いもあるからです

僕が前向きに、すべきことをしっかり取り組めていけているのは、そういったコミュニケーションや会話が増え、監督の思いをきちんと伝えていただけているからだとも思います。たとえその言葉がなくても、しっかりとやるべきことをやるのは変わりません。でも二軍にいてもモチベーションを高く保ち、向上心を持ちながら、どうしたらチームのためになれるのかということをより考えられるようになります。監督の思いを理解し、僕だけでなく、一軍・二軍のチームみんながしっかりとした行動が取れているのではないかなと思います」

中﨑翔太(なかざき・しょうた)

1992年8月10日生、鹿児島県出身、30歳。日南学園高(2010年ドラフト6位)。入団4年目となる2014年に初セーブを挙げると、翌年から抑えとしてゲームを締める役割を託された。2016年からの3連覇では34、10、32セーブの成績を残し、3年連続の胴上げ投手となった。2019年からは満足のいくシーズンを送ることができてはいないが、地道に調整を重ね守護神の座に返り咲くことを誓う。マウンドに上がった時の気迫みなぎる表情は、闘志の表れ。今シーズンも重要な場面で、その右腕に頼ることになるだろう。

広島アスリートマガジン5月号は、「まだ見たい!もっと見たい!」勝利を知る経験者たちの魅力をお届け! カープ3連覇を支えた投打の主力たちの現在地に迫ります。