気迫を込めた試合を決める最後の一球。マウンドに駆け寄る仲間たちと共に、歓喜の渦に巻き込まれたあの3シーズン。カープの守護神として、3年連続の胴上げ投手となった中﨑翔太はフル回転で戦い抜いた。今、若い選手が躍動するあのマウンドに再び立つことを誓い、チームにできること、経験者として伝えなければいけないことを語ってくれた。そこには悲壮感など全く感じさせない、前を向き続ける男の姿があった。

中﨑選手は、ベテラン・中堅選手が一つの方向を向いてチームを牽引しているという。

◆チームが一つの方向に向いて、やっていけていると感じる。

─どうしたらチームのためになれるかと選手それぞれが考えているのは、新井監督が持つ高いリーダーシップの影響ということでしょうか?

「先頭に立つ新井監督はもちろん、一軍で頑張っている秋山(翔吾)さんやキク(菊池涼介)さん、ピッチャーなら大瀬良(大地)さん、九里(亜蓮)さんといった人たちが中心になって、チームが一つの方向に向いてやっていけているんじゃないかと感じています」

─そんな新井監督新体制の下、春のキャンプはどんなテーマで臨まれましたか?

「毎年一緒なのですが、チームの力になるために、結果を残すために体調管理だとか体づくりを、オフから取り組んできました。リリーフですから、まずはいつ呼ばれてもいいように、体調面をしっかりコントロールしていくこと、そして瞬発的に十分な力を発揮するためのトレーニングなど、トレーナーさんと話しながら取り組みました。

技術面では投手コーチに相談しながらですね。僕からコミュニケーションを取るのは得意ではないんですが、先輩とか後輩といったことは関係なく、若い選手からも気付いたところを指摘してもらったりもしました」

─若い選手が増えていることで、何かチームが変わった点などありますか?

「特にチームが変わったというのは感じませんが、良い選手が多いので、負けていられないなという気持ちで取り組めています。刺激にもなりますし、参考にしたいなと思うところもたくさんあります。僕自身がやらないといけない立場なので、ピリピリすることもありますが、チームが勝つためにどうしていくかが大前提です。

打たれたな、上手くいってないなという若い子がいれば、アドバイスや声掛けをしたりすることもありますし、僕個人の意見を言うこともあります。ただ、今の若い子は、しっかりとした自分の考え方を持っているので、自分で考えて行動や投球ができている選手が多いです。だから僕も、見習っていこうという場面はあります。歳を重ねても、僕が見習うべきことは、まだまだありますから、僕が登板した後に、今のどうだった? こうやった方がいいかな? なんて聞くこともありますね」

中﨑翔太(なかざき・しょうた)

1992年8月10日生、鹿児島県出身、30歳。日南学園高(2010年ドラフト6位)。入団4年目となる2014年に初セーブを挙げると、翌年から抑えとしてゲームを締める役割を託された。2016年からの3連覇では34、10、32セーブの成績を残し、3年連続の胴上げ投手となった。2019年からは満足のいくシーズンを送ることができてはいないが、地道に調整を重ね守護神の座に返り咲くことを誓う。マウンドに上がった時の気迫みなぎる表情は、闘志の表れ。今シーズンも重要な場面で、その右腕に頼ることになるだろう。

広島アスリートマガジン5月号は、「まだ見たい!もっと見たい!」勝利を知る経験者たちの魅力をお届け! カープ3連覇を支えた投打の主力たちの現在地に迫ります。